福岡や長崎など8県にまたがる「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録をめぐり、日韓の外交戦が活発化することになりそうだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は2015年5月4日に官営八幡製鉄所(北九州市)や「軍艦島」としても知られる端島(はしま)炭鉱(長崎市)など23施設の登録を勧告したが、そのうち7施設で朝鮮半島からの強制徴用が行われたとして韓国が反対しているためだ。
韓国メディアによると、この問題をめぐり韓国政府は日本政府と協議を予定している。協議の場では、強制徴用に関連した施設を登録の対象から外すように求めるとみられるが、日本側が応じる可能性は低い。韓国側からすれば勧告が決まってから協議を始めても「後の祭り」で、韓国政府は国内世論の突き上げを受けることになりそうだ。
韓国政府は5万7900人の強制動員を主張
韓国政府では、これら7つの施設に計5万7900人が強制的に動員され、そのうち94人が死亡、5人が行方不明になったとみている。韓国政府はこういったことを根拠に、これらの施設が「世界遺産の基本的な精神に合わない」と主張している。こういった見方は韓国では少なくない模様で、京郷新聞は、端島炭鉱については「地獄」という別名があり、長崎造船所は「戦犯企業」三菱重工業が所有しているなどと指摘している。
聯合ニュースやKBSによると、5月末にも韓国側の求めに応じる形で、東京で協議が行われる見通しだ。局長級または次官補級が出席する模様だ。ただ、この協議が何らかの意味を持つとは考えにくく、KBSでは、
「日本が申請した23か所の近代産業施設について(イコモスが)『登録勧告』を決めてから初めて日韓の公式協議を行っている」
「これらの(7か所の)施設は、すべて『登録に適合している』と判定された状態で、現実的に登録を防ぐことは容易ではない」
などと韓国政府の対応が後手に回ったことを非難。京郷新聞は、今回の勧告で、
「世界遺産登録の大きな関門を越えた。5万8000人近い朝鮮人が経験した強制労働の歴史が消去される可能性が高くなった」
と嘆いた。