マスコミも好意的
65歳未満で発症する若年性認知症(2009年公表の調査で推計約3万8000人)対策では、働き盛りの世代という高齢期とは違った生活課題があることを重視。本人や家族の専用相談窓口を2017年度末までに全都道府県に設け、支援団体と本人をつなぐ調整役を配置。周囲との交流や就労など社会参加を支援するとした。
介護者支援では、介護ロボットや歩行支援機などの開発支援も盛り込んだ。
地域ぐるみの取り組みとして、認知症で行方不明になる人の発見や保護のため、警察や住民が一体となった見守り体制を全国で整え、交通事故を防ぐ訪問指導や、詐欺などの被害に遭わないための相談体制も設けることを打ち出したほか、認知症になっても生きがいを持って暮らせるよう、就労継続のための支援、ボランティア活動など社会参加のための支援の強化も盛り込んだ。
国家戦略に、認知症家族団体関係者などから「国家戦略と位置付けたことに意義がある」「当事者の声を重視するという姿勢は評価する」など歓迎の声が出ている。日頃、政府の施策になにかと注文を付けるマスコミも、概して好意的な論調が目立つ。ただ、あくまで国家戦略は大枠の方向性を示すもので、具体化はこれからの課題になるため、「総論賛成で、まだケチをつけにくい」(全国紙記者)という面もある。
ある霞が関関係者は「早期発見が重要な一方、認知症だと知ることで本人や家族が絶望し、最悪の場合、鬱になってしまうなど、現実は一筋縄ではいかない。国家戦略の掛け声はいいが、2015年度から介護報酬が引き下げられ、家族への負担が重くなる懸念も根強いなど、財政状況が厳しい中で、個々の実情に合った対応をしていくのは簡単ではない」と指摘している。