長く濃い「バサバサまつ毛」は女性の憧れだ。しかし、目を守るという役割を考えると、必ずしも長いまつ毛がよいというわけではなさそうだ。
ヒトもキリンも最適な長さは目の幅の3分の1
まつ毛は目に異物が入り、角膜などを傷つけるのを防ぐ働きをしている。長いほうが目にゴミが入ることも少ない、と多くの人は考えるのではないだろうか。しかし、2015年2月に「Journal of the Royal Society Interface」誌に掲載された論文によると、22種類の哺乳類でまつ毛の長さと目の幅の比率が共通しており、この比率こそが「目を保護する」というまつ毛の役割にとって最適な長さであると説明している。
米ジョージア工科大学の生物学者、デビッド・フー氏と大学院生のギレルモ・アマドール氏らの研究チームは、ニューヨークの米国自然博物館が所蔵する動物の毛皮についているまつ毛の長さを測定。アムールハリネズミやチンパンジー、ジャイアントパンダ、ラクダ、キリンなど22種類の哺乳類において、まつ毛の長さは目の幅のおよそ3分の1だった。ヒトについてもこの比率が当てはまるという。
その理由を探るため、研究チームは目の模型を作り、小型のファンで風を送って空気の流れを再現。まつ毛の長さを変えて、目から蒸発する水分量と目の表面に付着する微粒子の数を測定した。短いまつ毛を長くしていくに従って蒸発する水分量が減り、微粒子の数が減った。一方、長いまつ毛をさらに長くしていくと、微粒子の量が増え、水分の蒸発も早くなった。蒸発する水分量と目の表面に付着する微粒子が最も少なかったのは、まつ毛の長さが目の幅の3分の1のときだった。
アマドー氏は、「まつ毛は目に入ってくる空気をそらす防壁となり、角膜の表面の水分蒸発量をコントロールしている」と説明している。長さが目の幅の3分の1のとき、まつ毛が気流に与える影響はもっとも大きくなり、それより長くなると目に空気や埃が入りやすくなり、目の表面の水分量が減るという。「長くエレガントなつけまつ毛は、見た目には美しいかもしれないが、目の健康のためには良いとは言えない」