ミシュラン2つ星の有名すし店から、外国人を理由に予約を断られる差別を受けた――。在日中国人ジャーナリストの莫邦富(モー・バンフ)さんがフェイスブックなどでこう訴え、ネット上で論議になっている。
このすし店は、東京・銀座にあり、カウンター10席ほどのこじんまりした店だ。高級店として知られており、夜のコースは、2万円以上はする。
「予約をしたのに来ない海外の客が多い」
莫邦富さんは、2015年4月11日のフェイスブックなどで、この店から外国人差別を受けたと訴えた。夕刊紙「日刊ゲンダイ」の26日付記事でも、莫さんはそのときのことを詳細に証言し、大きな話題になった。
それらによると、莫さんの日本人女性秘書が8日、この店に電話で予約を取ろうとした。5月12日に4人でと伝えると、店側は「空いてます」と答えた。ところが、莫さんの名前を言うと、「海外の方ですか?」と聞かれ、日本人の名前での予約を求められた。今度は莫さんが電話に出て、4人とも中国人だが、自らは来日30年で永住資格のあるジャーナリストであり、1人は日本に留学経験があり日本の政官界とも付き合いのある社長だと説明した。しかし、店側は、「調整が必要です」と繰り返すだけだったという。
このことについて、莫さんは、フェイスブックで「信じられない」「こんなサービス態度でいいのか?」と嘆いている。
外国人の予約を断る理由について、店側は、日刊ゲンダイの取材に対し、海外の客は予約をしたのに来ないなどトラブルが多いことを挙げた。このため、ホテルのコンシェルジュか、あるいはカード会社を通じた予約に限定しているというのだ。また、店の雰囲気作りのため、日本人客と海外の客との割合を半々にしているとも明かした。
莫さんは海外からの旅行客ではなく永住の在日中国人だということを取材で聞いても、店側は、電話では分からないため一律に対応していると説明したという。
ミシュランは静観?
仏AFP通信も4月27日、莫邦富さんが差別だと訴えた外国人予約拒否の問題を取り上げた。その記事では、店側の反論も載せており、対応に差別的な意図はなかったとする主張を紹介した。
ツイッターでは、店の常連客だとして、店側の対応を擁護する発言も出ている。真偽ははっきりしないが、このツイートによると、ドタキャンするのは、ミシュランガイドを見て来た中国人の富裕層客が多いという。あるときは、中国人が5分前に6席分をキャンセルし、店側が困っていたので友人を誘って4人で食べに行ったそうだ。このツイート主は、「鮨ネタは冷凍保存できないんだよ」「ドタキャンされたら仕入れも手間かけた分もすべて無駄になる」として、その窮状に理解を求めている。
ネット上でも、店側を擁護する声が多い。「せめてキャンセル料が取れるようにってことなんだろ」「じゃあカードで予約しろって話だよ」「断られても仕方ないだろう」などだ。
もっとも、「選ぶ権利があることと、その基準が適切であることは別問題だよ」「日本人に対しても『ホテルのコンシェルジュかカード会社を通して』とやればいいのでは?」といった異論は出ていた。
ミシュランガイドの広報担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、今回の差別論争が評価に影響することを否定した。
「基本的に料理に評価するスタンスを取っており、接客は評価には含まれていません。ですから、接客にどうこう言える立場ではないです。今回のことについては、特に対応しておらず、今後も通常通りにミシュランの調査をする予定です」
店側にも取材しようとしたが、休みなのか何度電話しても応答がなかった。