「韓国の外交はどこに流れているのだろうか」「韓国の戦略的価値は縮小するかもしれない」。
訪米した安倍晋三首相のオバマ大統領との首脳会談や米議会での演説を受け、韓国では焦りが募っているようだ。メディアはこれまでの朴槿恵政権の外交を「2年あまりの無能と無気力」と切って捨て、非難する論調を強めている。
対日外交の見直しを訴える論調
「サンキュー・ソー・マッチ」。2015年4月30日(日本時間未明)、安倍首相が日本の首相として初めて米国上下院合同会議で行った演説をこう締めくくると、場内はスタンディングオベーションで応えた。
演説の中で首相は、戦後日本と米国のつながりを強調。TPPでの協力や米国の外交方針「リバランス」への支持を明確にし、「私たちの同盟を『希望の同盟』と呼びましょう」と訴えた。
また、首相個人の米国との関係も前面に押し出した。かつて、祖父の岸信介首相(当時)が演説を行ったことや、自身のカリフォルニアへの留学経験なども披露し、「私の名前はエイブ(Abe)ではありません」とジョークを飛ばす余裕を見せた。
安倍首相の演説や首脳会談は日米メディアで大きく取り上げられ、韓国メディアも鋭く反応している。
安倍首相が「アジア諸国に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」と述べつつも、侵略や慰安婦問題について言及しなかったことを
「アジア諸国と和解できる機会を自ら蹴った」(中央日報、以下いずれもウェブ日本語版)
「韓日関係の改善は当分見込めそうにない」(聯合ニュース)
などと問題視した。
その一方、日米両国の蜜月ぶりを見せつけられたことを受け、朴政権の動きの鈍さを非難する論調が盛んだ。
東亜日報は29日の社説で、日米が共同ビジョン声明を発表したことについて、
「韓国が日本に背を向ける対日外交を続けるなら、韓国の戦略的価値は縮小するかもしれない」
と指摘。周辺国の変化に合わせた「外交安保チームの熟慮が必要だ」として、これまでの対日外交の見直しを求めた。
さらに翌日の社説でも安倍首相の訪米を取り上げ、
「韓国は米国との同盟国の優先順位で日本に押されていることが再確認された」
とする。米中2つの大国の間で立ち位置がはっきりしない自国について、「韓国の外交はどこに流れているのだろうか」と疑問を呈した。
有力紙「過去2年あまりの無能と無気力」とバッサリ
朝鮮日報はさらに厳しい。今夏予定されている朴大統領の訪米を韓米同盟強化の「絶好の機会」と位置付けた上で、
「韓国外交が過去2年あまりの無能と無気力から脱却し、国家の生き残りの戦略を掲げ、これを行動に移していくべき時だ」
と主張。政権発足からこれまでを「無能と無気力」と切って捨てているのだ。
朴外交に批判的なのはメディアだけではない。聯合ニュースは与党セヌリ党の幹部、劉承ミン氏が
「政府の対日、対米外交の戦略の不在と失敗を指摘せざるをえない」
と批判したことを伝えた。同ニュースによると「政府に対しては『外交の失敗』『外交的な孤立』という批判が強まる見通しだ」という。