中国人観光客などによる「爆買い」などでインバウンド消費が注目されるなか、2015年初旬に日本での買い物に使われた支出金額の平均が約17万円となり、14年春と比べてほぼ倍増したことが電通の調べでわかった。
「爆買い」の背景にあるのは、「品質のよい日本製が、安く買える」から。旅費をかけても、日本に来て買いたいということらしい。
「ヘルスケア・化粧品」10人に1人が「11個以上」の大量消費
「爆買い」調査は、中国・北京と上海、香港、台湾、韓国の5つのエリアで、過去1年以内に日本を訪れた20~59歳の男女を対象に、購入した商品や購入場所、情報を得た(接触)メディアなどの動向を、2015年3月10日~18日に調べた。
それによると、訪日観光客の日本での買い物の支出金額の平均は、この1年で8万8767円から17万4円にほぼ倍増。買い物だけで50万円以上を消費する観光客は、全体の4.1%を占めた。なかでも、北京や上海は他のエリアと比べて買い物支出が多く、10人に1人が買い物で50万円以上を消費したという。
中国人観光客が、日本で積極的に買い物をしていることがうかがえる。
また、購入個数に着目したところ、同じカテゴリーの商品を6個以上買う観光客の割合は、約1年前と比べて13のカテゴリーのすべてで増加した。
買い物の目的で、「自分のために購入する」という観光客は62.7%(全13カテゴリーの平均)で、それに対して「自分以外(家族・親族、配偶者・パートナー、友人、職場の同僚)のために購入」する観光客は67.0%を占め、「爆買い」の背景には他の人のために買う消費行動の「やまわけ買い」があることがわかった。
電通は「やまわけ買い」によって、購入する商品の数が増えたことも買い物の平均支出額の増加要因になったと考えられる、とみている。
さらに項目別にみると、「家電製品」「AV・音響機器」「スマートフォン・タブレット」「衣服」は自分のために購入する人が多く、「医薬品」「ヘルスケア・化粧品」「家具」「トイレタリー製品」は家族・友人など自分以外のために「やまわけ買い」する人が多い。
「家電製品」を購入する人の85.0%が1~2個を購入するのに対して、「ヘルスケア・化粧品」では60.3%が3個以上、10人に1人が11個以上を大量消費しているという。
最近は、家電製品やAV・音響機器、宝飾品など単価の高い商品でも「やまわけ買い」される傾向が強まっているようだ。
円安の進展よりも輸入関税の影響が・・・
日本の観光庁によると、2014年に日本を訪れた外国人旅行客の消費額は2兆2780億円で、このうち中国人観光客による消費額は5583億円だった。中国人観光客にとって品質や性能のよい日本の家電製品や日用品は根強い人気で、2015年2月の春節時には電気炊飯器や洗浄便座のほか、ヘアドライヤーやスチーム美顔器に電気カミソリ、また14年秋から新たに免税の対象となった化粧品などが売れに売れた。
電通の調査でも、商品カテゴリー別の購入率トップ3は「食料品・飲料」「ヘルスケア・化粧品」「衣服」だった。
わざわざ日本に来てまで「爆買い」していく理由には、「商品・サービスの質が高い」「自国よりも商品が安く購入できる」「ホンモノ(偽物ではない)の商品を購入できる」というイメージが訪日観光客の中に増加しているという。
「ホンモノを、安く買える」背景には、アベノミクスによる円安がある。たとえば、中国・人民元をみると、春節にあたる2013年2月(月間平均レート)には1元14.82円だったが、14年2月に1元16.71円、15年2月には1元19.32円と円安が進んだ。
これだけでも、国内で品質の落ちる中国製を買うより、日本に旅行するついでに買い物するほうが断然オトクだが、さらに「中国はもともと輸入関税が高いですから、為替よりもその影響のほうが大きいですよ」と、新興国経済に詳しい第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、西濱徹氏は指摘する。
中国では、輸入関税に加えて増値税(物品の輸入にかかる税金、税率17%)などがかかるので、「高級品ほど高くなりがちです」と話す。商品によっては、40~50%にものぼることがあるようだ。