撮影開始直後に記者が「よろしくお願いします。10分か15分やり取りしてもらって」
ただ、映像素材の中には別の面で「やらせ」が疑われかねない部分があった。相談場面の撮影が始まると、記者は
「よろしくお願いします。10分か15分やり取りしてもらって」
と話し、相談が終わると
「お金の工面のところのやりとりがもうちょっと補足で聞きたい」
と話しかけていた。報告書では、素材を確認した結果として「記者がやりとりの文言を指定したり、新たな内容を付け加えさせた事実はなかった」と結論付けているが、
「自らに都合のよいシーンに仕立てようとしたのではないかという疑念を持たれかねず不適切だった」
とも指摘している。
それ以外にも、多数の不適切な点が指摘されている。相談が行われた部屋はB氏の知人が借りており、B氏が鍵を預かっていたが、番組では「活動拠点」だと説明していた。この点は4月9日発表の中間報告でも指摘されており、同日放送の「クロ現」でも陳謝している。
番組の構成も問題視された。放送された番組は(1)番組側がブローカー(A氏)の存在を突き止めてインタビューする(2)多重債務者(B氏)がブローカーのもとを訪れて相談する(3)相談後にカメラが多重債務者を追いかけて問いただす、とう内容だった。
記者がB氏に相談を持ちかけたことで今回の取材が始まったという経緯からすると、番組の筋書きは事実と異なる。だが、記者は「ネタ元の話をそのまま見せることに抵抗があった」などとして、上記筋書きに沿った取材メモを作成して取材デスクや制作チームに報告し、納得させていた。
報告書では、こういった点についても、
「実際の取材過程とは異なる流れを印象づけるものであった」
として、「過剰な演出が行われた」と指摘した。
記者以外の目によるチェックも働かなかった。撮影現場には記者、A氏、B氏が3人そろって姿を見せている。筋書きどおりならば3人が一緒に登場するのは不自然なはずだが、カメラマンやディレクターは特に記者と2人の関係について確認しなかった。
これに加えて、上司は取材メモの内容を信用したこともあって、試写で不自然な点に気付くことができなかった。