京大出身のルーキー田中英祐とハンカチ王子の斎藤祐樹が投げ合い、大きな話題を集めた。
結果はともに乱調だったが、2人の立場は対照的だった。
田中は2回5失点、斎藤は4回途中8失点
試合といってもファームのイースタンリーグ。2015年4月24日、ロッテの田中、日本ハムの斎藤がともに先発した。ファンが見たかった対戦が二軍で実現した。
鎌ヶ谷球場は大騒ぎだった。
テレビカメラが12台。取材記者は40人以上。さらに観衆は1200人を超えた。普段ではありえない光景に関係者は大忙しだった。
両投手の結果は田中が2イニングで5安打、3四球の5失点。一方の斎藤はそれに輪をかけるような内容で、4回途中まで10安打、8失点と散々だった。
「ストライクを取りに行った球を打たれた」
田中はそう振り返った。斎藤はもっと深刻だった。
「投球内容を分析して何が悪いのか考えたい」
たまたま打たれたという感じの田中に比べ、斎藤は迷路に入ってしまったようである。
「無期限の二軍調整」という現実
登板報告を聞いた両軍の監督の話も対照的である。
「田中は賢いから研究してくるから大丈夫」
そう言うロッテの伊東監督に対し、日本ハムの栗山監督は厳しい。
「田中よりもっと打たれたのか。気になるよ。ファームでも競争しなくてはいけない」
田中は29日の祝日に本拠地でプロデビューする予定で、その調整登板だった。その予告効果は大きく、前売り券は完売状態。3万人を越える観客動員は確実となっている。
「こんなのは久しぶり」
ロッテの球団スタッフは興奮気味だ。なにしろダルビッシュ有(レンジャース)、田中将大(ヤンキース)が日本ハム、楽天でデビューしたときより大勢のファンを集める勢いである。
田中が注目されているのはノーベル賞学者を何人も輩出している京大から初のプロ野球選手であること。「文武両道の実践者」として関心は高い。
今季のロッテはこれといった売り物がなく、本拠地の試合では早くも観客動員1万人を切る有様。田中のデビューを起爆剤にしたいところだ。
5年前、斎藤もそんな状況にあった。甲子園で優勝したときは「ハンカチ王子」と呼ばれ、大学時代は自ら「持ってる男」と言って人気を得た。ところが毎年期待を裏切ってきた。今シーズンも登板しては打ち込まれた。
「無期限の二軍調整」
これが斎藤の現状だ。田中と斎藤の投げ合いは厳しいプロ野球の縮図ともいえる。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)