「無期限の二軍調整」という現実
登板報告を聞いた両軍の監督の話も対照的である。
「田中は賢いから研究してくるから大丈夫」
そう言うロッテの伊東監督に対し、日本ハムの栗山監督は厳しい。
「田中よりもっと打たれたのか。気になるよ。ファームでも競争しなくてはいけない」
田中は29日の祝日に本拠地でプロデビューする予定で、その調整登板だった。その予告効果は大きく、前売り券は完売状態。3万人を越える観客動員は確実となっている。
「こんなのは久しぶり」
ロッテの球団スタッフは興奮気味だ。なにしろダルビッシュ有(レンジャース)、田中将大(ヤンキース)が日本ハム、楽天でデビューしたときより大勢のファンを集める勢いである。
田中が注目されているのはノーベル賞学者を何人も輩出している京大から初のプロ野球選手であること。「文武両道の実践者」として関心は高い。
今季のロッテはこれといった売り物がなく、本拠地の試合では早くも観客動員1万人を切る有様。田中のデビューを起爆剤にしたいところだ。
5年前、斎藤もそんな状況にあった。甲子園で優勝したときは「ハンカチ王子」と呼ばれ、大学時代は自ら「持ってる男」と言って人気を得た。ところが毎年期待を裏切ってきた。今シーズンも登板しては打ち込まれた。
「無期限の二軍調整」
これが斎藤の現状だ。田中と斎藤の投げ合いは厳しいプロ野球の縮図ともいえる。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)