中国人の葬式観は「人がたくさん来て、どんどんお金を使うもの」
中国事情に詳しいノンフィクション作家・安田峰俊さんは「葬儀の際に淫らな劇などを催す慣習は遅くとも清朝時代以前からあり、当時の地方官僚や文化人が『淫風』と批判した記録も多く見られます」と明かす。現代でも、葬儀でのストリップショーは上流層やホワイトカラーが多く住む都市部でなく、もっぱら農村部の慣習なのだという。娯楽の少ない農村部では、地元住民が集まるイベント、老人らの楽しみ、と認識されているようだ。もっとも、「中国の農村では葬儀の際に必ずストリップを催す、などということはない。そこは誤解なきよう」という。
地域性はあるのか。そもそも中国人の伝統的「葬式観」は「人がたくさん来て、どんどんお金を使うもの」なので、「(一部地域に限らず)中国各地の農村で、あってもおかしくない慣習です。表沙汰になっていない事例はたくさんありそうです」と語った。
となると、報道で伝えられた「ストリッパーを呼ばないと、誰も(葬儀に)来なくなる」という地元住民の声にも合点がいく。安田さんも「やや誇張されているものの、多少はそういう側面もあるはず。何らかのイベントがあった方が人は来るよね、という感じです」と話す。
台湾でも盛んな理由については「台湾は先進国なのですが、文化大革命を経験せず、中国大陸以上に伝統的な価値観が残されている面があります。そのため、ストリップ葬儀の伝統も一部に残っているのでしょう」と分析した。
では、中国人の伝統的価値観に基づく慣習が、なぜ今規制されるのか。
「ネットで『炎上』し、これを期に禁止政策を出したのでは。習近平は文化政策の好きな政治家で、理由を裏読みすることも不可能とは言えませんが、そもそも現代の中国では、いかなる政権でもこの手の慣習を快く思わないはずですからね」