首相官邸(東京都千代田区)の屋上で、ドローン(小型無人飛行機)が発見された事件で、警視庁は2015年4月25日、福井県小浜市の無職、山本泰雄容疑者(40)を威力業務妨害の罪で逮捕した。山本容疑者は24日夜、福井県警小浜署へ出頭していた。
山本容疑者が運営していたとするブログが、25日朝になり話題になっている。「官邸サンタ」を名乗るブログで、ドローンを官邸へ送り込むまでを克明に記載。報道があった22日には、なかなかドローンが発見されなかったことについて、「2週間放置て...」とグチる記載もあった。
ドローン墜落は「4月9日」
容疑者のものとされるブログは、「ゲリラブログ参」という名称。ブログの説明には「テロとか」とだけ記されていて、武装した男の絵が大きく表示されている。またブログの背景画像には、放射能マークを禁止するような記号が並べられている。
ブログを読むと、「官邸サンタ」の動きが手に取るようにわかる。官邸でドローンが発見された4月22日には、
「ヤフーニュースで『官邸にドローン』 遅せーよ職員!てゆーか警備員じゃないのか...2週間放置て...」
「犯罪者は自分の報道をこんな感じでみるのか...平常心を保つのが難しい...放射線も感知してくれたか...液体とか言ってるけど土だし...あとは声明文...威力業務妨害になるのか...公務執行妨害とかはならないのか...さて...どうするか...」
などと、犯行をほのめかす投稿をしている。
官邸サンタが「遅せーよ」というのには訳がある。実は、官邸へドローンを落としたのは、4月9日だったというのだ。12日の投稿によると、9日3時30分に東京・赤坂の「通りから入った駐車場」から離陸させた。しかし、途中から電波状況が悪くなり、カメラからの画像も途絶えてしまう。結局、機体を見失ってしまい、「帰宅後ニュースをみるが...何も報道ない...」と肩を落としていた。
クリスマスイブにも計画「飛ばしたかった...」
「官邸サンタ」は、なぜドローンを官邸へ落そうと考えたのか。4月10日の投稿では、彼の描いていた青写真が語られている。8日にドローンを落とし、マスコミが報道。翌9日にブログで犯行を明かし、警察へ出頭。12日に「混乱の中で選挙を迎える」というもの。ここでいう「選挙」とは、山本容疑者の住む福井県知事選だ。
今回の福井県知事選は、現職の西川一誠氏(無所属)と、県内原発の再稼働に反対する金元幸枝氏(共産)の一騎打ちだった。「自治体間の抗争を演出して官邸から福井知事選に注目を移動するための手段」(24日の投稿)としてのドローン墜落を考えていたようだ。しかし、犯行が天候不良で翌9日へずれ込み、発見も約2週間後。県知事選も西川氏の圧勝だったため、目論見は完全に外れた。
最初に官邸へドローンを墜落させようとしたのは、14年12月24日だった。その日の第3次安倍晋三内閣発足にあわせ、「新閣僚とマスコミが揃う官邸中庭に汚染土積んだドローンを下ろす」計画を立てたが、「こんな小さいラジコンでパニックを起こせるのか...失笑に包まれるのでは...」といった気持ちが邪魔をして、実行には移せなかった。プレゼントを届け損ねた「官邸サンタ」は、その日のブログをこう締めくくっている。
「帰りの道中少しホッとしている...家に着いた頃には気が狂うほど後悔...飛ばしたかった...」