高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「2極の一角」へ最後の好機 大阪は「都」になるべきだ

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   いよいよ5月17日(2015年)には、「大阪都構想」をめぐる住民投票が行われる。これは215万人による日本初の大規模な住民投票で、全国からも注目されている。

   東京一極集中がいわれる中で、大阪が二極の一つになるために、絶好のチャンスである。

  • どうなる大阪の住民投票
    どうなる大阪の住民投票
  • どうなる大阪の住民投票

「高速道路」から分析

   都が一つか、二つか。これは、都市計画上、決定的に異なる。大阪が今の政令都市の一つに甘んじるか、それとも東京と並ぶ都になるか。

   大阪都構想に反対の人は、今の政令都市でいいという人たちばかりだ。そうではなくもっと大きな構想をもっている人もいるかもしれないが、そんな構想は今の段階では絵に描いた餅だ。大きな構想でも、今の大阪都構想の次でもできるものだ。今ある大阪都構想の否定にはならない。大阪都構想は手に届くところにある、現実である。

   大阪都構想の反対派は、二重行政を解消しても、そのメリットはコストを下回るとかいう、細かい試算ばかりしている。これまで大阪がたんなる政令都市であったデメリットが大きいことを知らない。その大きさは、筆者の経験した事例だけでも、今の細かい試算が無意味になってしまうほどだ。

   大阪の高速道路は、阪神高速道路が運営している。東京は首都高速道路だ。この二つは、似たようなエリアで総延長距離も大差ない。ところが、国や地元の関与の度合いをみると、両者はまったく異なっている。

   まず出資をみると、両社ともに国が半分の株式をもち、残りは地元自治体だ。阪神高速でいえば、大阪府と大阪市がともに14.4%だ。一方、首都高速では、特別区の出資はなく東京都に集約し、26.7%と地元自治体の中では図抜けている。

首都のバックアップ機能をもつ

   阪神高速、首都高速ともに、国の出資は50%であるが、実額でみれば、首都高速は、首都の高速なので、関西高速に比べて3割以上多くなっている。国の出資は、無利子融資と同じなので、国は補助金を与えているのと同じである。こうした補助金効果は、筆者が役人時代に導入した政策コスト分析によって把握できる。2005年当時で、将来の36年間で、阪神高速は2083億円、首都高速は3199億円の国からの財政支援を得るとされていた。

   これでわかるだろう、阪神高速は首都高速に比べて1000億円も少ない国からの財政支援に甘んじているのだ。

   と同時に、地元自治体の関与も、両社ではコントラストがある。両社の主要役員の出身をみると、阪神高速は、鉄道会社1、国交省2、プロパー1、一方の首都高速は、東京都2、国交省1、プロパー1である。阪神高速において大阪府と大阪市がともに出資していながら、どちらも1人の役員を送り込めない。しかし、首都高速では、東京都に出資が集約されているので、2人も役員を送り込んでいる。

   要するに、阪神高速は、国からのカネの引き出しもうまくできていないが、さらに大阪府と大阪市は関与できずに、国からの天下りが跋扈している。このため、実際の高速道路運営では、計画がうまく進展していない箇所がある。一方、首都高速は、国からカネをうまく引き出し、役員も送り込んで東京都が運営の主導権をもっている。こちらの実際の運営は、都市計画とうまく合って円滑に行われている。

   これは、大阪市が政令都市に固執して、結果として得るものがなかったという事例だ。

   大阪が、二極の一つになれば、首都のバックアップ機能をもつようになる。いわば、首都のコピーである。現在のところ、首都のバックアップができるのは大阪以外には考えられない。今、このチャンスを逃すのはもったいない。大阪市は、政令市の中で人口減少し衰退している希有な存在だ。大阪都を逃せば、その傾向はさらに拍車がかかるだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)など。


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