ヤラセ疑惑が持ち上がっているNHK「クローズアップ現代」で、今度はジャーナリストを薬密売人のように過剰演出していたと、写真週刊誌「FLASH」が報じた。このジャーナリストは報道被害を訴えているというが、NHKでは、J-CASTニュースの取材に対し、取材源の秘匿を理由に「お答えは控えます」と言っている。
週刊文春の記事がきっかけで、2014年5月14日の番組で出家詐欺のブローカーとされた男性がヤラセを訴え、放送倫理・番組向上機構(BPO)に審理を申し立てる事態になっている。
「ジャーナリストは、NHK記者の知人だった」?
この問題では、NHK大阪放送局の記者が、男性に演出を依頼したとも報じられている。NHKの調査委員会による中間報告では、記者はこのことを否定したとしているが、今回、FLASHが15年4月21日発売号で報じたのは、この記者による別の疑惑だった。
14年6月5日の「クローズアップ現代」では、「中高年と覚醒剤~薬物汚染・拡大の真相~」という特集を組んだ。そこでは、「脱法ドラッグの密売に詳しい人物」が顔にモザイクをかけられ音声を変えたうえで車の中で証言し、脱法ドラッグ(現在の危険ドラッグ)がここ1、2年で覚醒剤化している実態を話した。そして、「バリエーションを増やす中でいろんな薬を入れてきた。その中で覚醒剤的な成分を入れたところ、すごく売れた」と明かしていた。
ところが、FLASHの記事によると、この「密売に詳しい人物」は、NHK記者の知人のジャーナリストだったというのだ。
NHKに身を置く人物からFLASHに内部告発があったといい、このジャーナリストは、FLASHの取材に対し、記者の出演依頼に応じたことを認めた。番組では、顔を隠したうえで、密売人には見えないように求め、記者からは、「関係者」でなく「詳しい人物」と紹介すると説明を受けてOKを出したという。
とはいえ、記事では、「これを見た視聴者は、間違いなく男が密売に関わる人間だと思うはず」だとして、「新たなヤラセ」だと主張している。
NHKはヤラセを否定も、同じコメントを繰り返す
FLASHによると、出演したジャーナリストは、番組の映像を見て、「これでは、密売人と思われても仕方ない」と顔をしかめた。そして、事前の約束とは違うとして、別の日の番組でブローカーとされた男性と同様に、「自分も被害者」だと訴えたという。
NHKでは、FLASHの取材に対し、ヤラセを否定し、「『密売人』と字幕スーパーしたり紹介したりしておらず、密売人をうかがわせるようなコメントもしていません」と答えたとしている。
とはいえ、「関係者」とはせずとも、「詳しい人物」が「いろんな薬を入れてきた」などと説明すれば、密売に関わる人物だと視聴者は誤解してしまう恐れは否定できない。
元日テレ「NNNドキュメント」ディレクターの水島宏明法政大教授は、FLASHの取材にこうした点を指摘し、ヤフー・ニュースへの寄稿でも、「密売に詳しいジャーナリスト」などと番組で紹介するべきだったと批判した。そして、「視聴者をだました、とも言えるような放送の仕方」だとして、「NHKの放送倫理の意識というのはこんな程度だったのか」と疑問を投げかけている。
こうした指摘について、NHKはどう考えるのか。広報局では、J-CASTの取材に対して回答したが、FLASHの取材に返したコメントと同じで、再質問しても、このコメントを繰り返すだけだった。