「男女半々は全国紙として例がない」――2015年4月15日付け毎日新聞朝刊のコラム「水説」で同紙論説委員の中村秀明さんが誇らしげに綴った。今春、毎日新聞社には記者職として男女17人ずつが新卒で入社したという。
コラムによると、前年も4割が女性だったという。男性が多くを占めると言われる記者職でも女性の数が目立ってきたようだ。
記者職は長らく「男性社会」と言われてきた
「夜討ち朝駆け」や事件・事故の取材、一般人が記者という仕事に持つイメージを一言で表せば「過酷」だろう。
大きな出来事が発生すれば、昼夜関係なく現場へ駆り出される。自分で予定を決められず、休みも取れない。そのため、育休や産休などの休暇がどうしても必要となる女性にはハードルの高い職業で、記者職は長らく「男性社会」と言われてきた。
しかし、最近では記者職でも女性の採用比率が増えている。事実、朝日新聞社の2015年度採用サイトに設置された「内定者座談会コーナー」では、記者部門の内定者代表として女性が登場している。
ただ、少し古い話だが、09年9月10日付け朝日新聞電子版に掲載された記事「【新聞】増える女性記者にとって新聞社は働きやすい職場か」からは、現場の悩みが聞こえてくる。
筆者の服部孝司・神戸新聞社常務取締役(当時神戸新聞社地域活動局長)は、編集局で4年間記者の採用に携わった経験から、女性記者を扱う難しさを指摘した。
「入社間もない女性記者が妊娠して産休を申請したとき、私は『君は記者の仕事をどう思っているのだ』と叱責した」
「後で考えれば、もし新人の男性記者が、妻が妊娠したと報告したら、同じように叱っただろうか。妻に代わって 育休を取る男がいるはずがないと高をくくっているから、逆に祝福しただろう」
といったエピソードを明かし、
「育休明けの女性記者の復職先を決めるのも一苦労」
と書いている。バリバリ現場で働きたいという思いがある一方、育児にも手を抜きたくない。そんな女性記者の希望に対し、「同時に満たすことはできない」とキッパリ。
14年8月22日にはジャーナリストの木村正人さんがNHK女性記者の大量退職をブログで伝えた。それによると、同年2月から7月の5か月間で計15~17人が「育児」「病気」「親の介護」を理由に退職したのだという。
記者という職業に就く上で、女性に立ちはだかる壁は依然として高い。