メガバンクと異なる存在感を示せるか
三菱UFJ、みずほのメガバンクグループ2陣営と異なり、もともとグループ内に信託銀行を持っていなかった三井住友銀行は、信託業務の拡大が悲願。2013年に仏ソシエテジェネラル信託銀行を買収し、SMBC信託銀行に衣替えしたものの規模の小ささは否めず、富裕層の顧客を多く抱えるシティの個人向け銀行業務を統合して、規模を拡大する戦略をとった。
ただ、三井住友はグループで日本のVISAカードの総本山といえる「三井住友VISAカード」を展開しており、シティのカード事業には興味を示さなかった。そこですかさずカード事業買収に名乗りを挙げたのが三井住友信託だった。三井住友信託は、専業だけあって資産運用や不動産のサービスが充実しているが、「メガバンクに比べれば、一般の人になじみが薄い存在」(中堅行員)。顧客を従来の超富裕層から広げ、リテール(個人向け業務)を強化することが課題となっており、シティのカード事業を足掛かりに幅広い層へ浸透を図る考えだ。
高齢化で相続関連サービスなどのニーズが高まる中、メガバンクグループはいずれも信託分野を強化しようとしている。信託で出遅れた三井住友が追い上げを図る中、「ダイナース」ブランドを手に入れた三井住友信託が、メガバンク陣営とは違う形で存在感を示せるのか。三井住友、三井住友信託によるシティの事業買収をきっかけに、各陣営間の競争がますます激しくなるのは間違いない。