三井住友信託銀行が、米金融大手シティグループが日本で展開するクレジットカード事業を買収する。「ダイナース」ブランドのカードを発行しているシティカードジャパンの全株式を今年末までに買い取る。
カードを保有する顧客に対し、自行の資産運用商品などを売り込み、富裕層向けビジネスを強化する狙いだ。メガバンクと一線を画す独立系の専業信託投資銀行として存在感を高められるか、試金石になりそうだ。
事業拡大で火花
「買収を足がかりに、信託銀行らしい商品や幅広いサービスを提供していきたい」。東京都内で2015年3月31日に記者会見した三井住友信託銀行の岩崎信夫副社長は、シティからのクレジットカード事業買収の狙いについてこう語った。
買収の決め手になったのは、シティカードジャパンの顧客層だ。発行する「ダイナースクラブカード」と「シティカード」の会員は約70万人に上り、30代~50代の「現役バリバリの富裕層」(三井住友信託幹部)が多い。三井住友信託も傘下にカード事業会社を持つが、会員は約20万人。同行の顧客も富裕層が多いものの、シニア層が中心で、今回の買収によって顧客の数だけでなく、年齢層も拡大できるわけだ。三井住友信託は今後、クレジットカード事業を強化するとともに、シティカードジャパンの顧客に資産運用サービスや不動産などの営業を強化したい考えだ。
今回の買収劇のきっかけは、米シティが昨年、日本の個人向け部門からの撤退方針を決めたことだった。米シティは当初、個人向け銀行業務とクレジットカード事業をセットで売却する方針だったが、個人向け業務は既に昨年末、三井住友銀行への売却を発表しており、2つの事業をバラ売りする形になった。
銀行業界ではこの展開について、同じ「三井住友」の名前を掲げながら直接的な資本関係はなく、むしろ対抗意識を燃やしてきた三井住友信託銀行と三井住友銀行が「事業拡大をめぐり火花を散らしている」(大手行幹部)と見る向きが多い。