製紙業界5位の北越紀州製紙と6位の三菱製紙は2014年4月1日、検討を進めてきた販売子会社の経営統合を中止する、と発表した。
本体同士の経営統合に発展する可能性に期待が集まっていたが、協議はあっけなく白紙に戻った。紙の国内需要が先細りする中、製紙業界にとって再編は生き残りのかぎを握ると見られるだけに、破談には失望が広がっている。
製紙需要は落ち込む
両社は2014年8月、それぞれの販売子会社である北越紀州販売と三菱製紙販売を2015年4月をめどに経営統合する方向で検討を開始することで基本合意、具体的な協議を始めていた。
しかし、北越紀州によると、三菱製紙は2014年12月、経営統合に関する協議を一時的に中断すると「一方的に通知してきた」という。北越紀州は協議を速やかに再開するよう三菱製紙側に何度も求めたが、4か月間にわたって再開されることはなかった。さらに、北越紀州に対して「合理的な説明もしないまま」、4月1日の取締役会で基本合意書の解除を決定してしまったという。北越紀州は協議を一方的に中止したのは三菱製紙だと主張し、不信感と怒りをあらわにしている。
三菱製紙は「経営統合における諸条件の合意に至らなかった」とのみ説明し、具体的な中止の理由などは明らかにしていない。
少子高齢化など構造的な環境の変化で、国内の紙製品の需要は減少している。日本製紙連合会によると、紙・板紙の内需は2000年の約3200万トンから、2013年には約2770万トンと1割強も減少した。特に電子端末の急速な普及などで印刷・情報用紙の落ち込みは激しく、2013年は約950万トンで、2000年(約1190万トン)の約2割減まで縮小した。
「2強」が3位以下を引き離す
一方、国内の製紙業界は、王子ホールディングス(HD)と日本製紙2強が、3位以下を大きく引き離している。2強は国内の需要減に対応するさまざまな対策を進めており、特に王子HDは海外事業を拡大。2011年にはマレーシアの段ボール加工大手を買収し、2014年4月には官民ファンドの産業革新機構と共同でニュージーランドの製紙・製材大手からパルプ・板紙事業を買収すると発表し、競争力の強化を図り、3位以下を大きく引き離しつつあるのが実態だ。
こうした中、2強以外の製紙各社は焦燥感を強めており、北越紀州は2012年8月、大王製紙の創業家らから同社株式を買い取って筆頭株主となり、大王との経営統合を狙っていたとされる。しかし、大王の現経営陣の反発は強く、北越紀州の思惑通りには進んでいない。
三菱製紙も苦境は同じで、北越紀州、三菱製紙の両社はまず、販売子会社の統合を足がかりに、本体同士の統合を模索する計画だったとされる。しかし販売子会社の統合協議さえ頓挫し、関係者によると「三菱製紙は別の企業との提携も考え始めているのではないか」との観測も浮上、成果がないまま協議は止まった。関係修復も難しいとの見方が強い。
しかし、内需の縮小が避けられない中、両社とも単独で生き残るのは難しい環境だ。明確な生き残り策を描けなければ、2強との格差はさらに広がり、両社に立ちはだかる壁はさらに厚さを増すことになる。