韓国の2015年の経済成長率が2%台に低下する可能性があるとの、弱気な見方が広がっている。
韓国の経済成長率は、野村證券が予測値を3.0%から2.5%に下方修正。またBNPパリバ証券も2.7%、米格付け会社のスタンダード&プアーズは最悪2.3%まで下落すると予測した。そうしたなか、韓国銀行(中央銀行)は2015年4月9日、従来の3.4%から3.1%に下方修正すると発表した。
家計の債務負担重く、「日本型デフレ」の足音が聞こえてきた?
朝鮮日報日本語版(2015年4月8日付)によると、韓国金融研究院の辛星煥院長は2015年の韓国の経済成長率が2%台に低下する可能性があると指摘。「韓国経済は過去に経験したことのないトンネルに入った感覚」と語った、と報じている。
辛院長は「低成長」「低物価」「低金利」の、韓国経済が直面する「3低」の状況に、「不況が長期化し、政府が適切な経済政策をとることがむずかしくなった」とみている。
たしかに韓国の主な経済指標をみると、その深刻さが伝わってくる。4月1日に発表された3月の消費者物価は、前年同月比0.4%のプラスだったが、前月(0.5%増)から一段と減速。4か月連続の0%台で、1997年のアジア通貨危機直後以来となる低水準での推移が続いている。たばこの値上げ効果を除けば、物価上昇率は事実上マイナスに低下した。
また、3月の輸出額は前年同月と比べて4.2%減で、3か月連続で前年を下回る伸びにとどまった。一方、輸入額も15.3%減と6か月連続で前年を下回っている。ただ、原油相場の底打ち感もあって、前月からのマイナス幅は縮まった。
韓国経済に詳しい、第一生命経済研究所経済調査部の西濱徹・主任エコノミストは、「とにかく輸出が伸びないことには...」と、言葉が続かない。韓国経済は外部要因に影響されるので、「なかなか打つ手が難しい」ということらしい。
最大の輸出先である中国に景気の減速感がくすぶっていることに加えて、「最近はウォンがドルに対しては下がってきましたが、日本円やユーロに対してはまだ高止まり傾向にあります。価格競争力がついてきませんから、(ウォン高が)輸出の重石になっている状況は変わりません」と説明する。
国内消費はもっと深刻。韓国の家計債務は1089兆ウォン(約100兆円)にものぼり、じつに韓国GDP(国内総生産)の7割超の水準。
「家計の債務負担が多いということは消費に回るお金が減るということになりますから、消費は伸びにくくなります。しかも家計債務の9割超が住宅ローンなので、住宅価格が上がらないことには現状を打破することは難しいといえます」
こうした状況は、かつての日本に似ている。つまり、韓国は失われた20年ともいわれる「日本型デフレ」に陥るかどうかの瀬戸際にあるようなのだ。西濱氏は「2%とはかなり弱気な予測ですが、その水準は『日本型デフレ』を想定したものではないでしょうか」とみている。
不動産市場と証券市場は好調
その一方で、韓国ではこのところ不動産市場と証券市場は好調らしい。2015年4月3日付の朝鮮日報日本語版の社説「不況の韓国経済、不動産と株価だけ上向きの意味」によると、ソウルのマンション取引件数は2006年以来の最高を記録し、過熱懸念が聞かれるほどで、証券市場も株価指数が全体的に上昇して出来高も増えている、という。
原因は、韓国銀行(中央銀行)の政策金利の引き下げにある。市中にあふれた資金が不動産と証券市場に流れた。
現在、韓国の政策金利は1.75%。追加利下げの観測もあり、この資金が景気回復につながればいいのだが、前出の第一生命経済研究所の西濱徹氏は、「いま以上の利下げは難しい」と指摘。「利下げがあっても小幅なものでしょう」と、大胆な金融緩和には踏み込めないとみている。
「利下げの余地はまだありますが、あまり大きく下げるとかえって債務を増やしてしまいます。また、一方で米国が利上げしようという時ですから動きづらいこともあり、簡単には下げられないのが現状です」と説明する。
「長いトンネル入り」も信憑性を帯びてきている。