トヨタ、中国とメキシコに新工場 「建設凍結」を前倒しで解除

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   トヨタ自動車は2018~2019年に、中国とメキシコに新工場を建設する方針を固めた。これまでトヨタはリーマン・ショック後の赤字転落や米国での大規模リコール(回収、無償修理)問題を反省し、既存施設の効率化を重視し、2013年度から3年間、新工場建設を凍結すると表明していた。しかし、好調な新車販売を受け、前倒しで凍結を解除、世界販売首位を争う独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)に対抗する戦略に切り替える。

  • 5年ぶりの工場新設
    5年ぶりの工場新設
  • 5年ぶりの工場新設

中国は広州市に建設

   予定通り建設が進めば、2013年に稼働したタイの工場以来5年ぶりの新工場になる。中国では、2018年の稼働を目指し、広州市に新設。小型車「ヤリス」(日本名ヴィッツ)を年10万台生産する計画だ。メキシコには2019年、グアナファト州に生産能力年20万台の工場を設け、米国向けを中心に「カローラ」を生産する。投資額は計1500億円になる見込み。

   トヨタは2000年代前半、年50万台ほど生産能力を増やす拡大路線を歩んだ。ところが2008年のリーマン・ショック前後の需要急減に対応できず、営業赤字に沈んだ。2009~2010年には米国で大規模リコールが社会問題化。品質への信頼が揺らぐ事態となったため、まずは既存施設の体質改善に取り組むことにした。2013年度から3年間は、工場新設の判断をしない考えだった。

   既存設備の徹底的な効率化を追求した結果、2009年に70%だった工場稼働率は、90%超にまで上昇。設備の小型化を進め、工場の初期投資も2008年比で4割削減できる目処が立った。より筋肉質の体質になり、2015年3月期は過去最高となる2兆7000億円の営業利益を見込んでいる。

ライバルの攻勢に対抗

   世界の自動車販売競争は激しさを増している。2014年は1023万台のトヨタが3年連続で首位だったが、VWも初めて1000万台を突破し、猛追している。3位のGMも992万台と、同社としては過去最高だった。

   ライバルの攻勢を、指をくわえて見ているわけにもいかない。特に、世界最大の自動車市場である中国では、VW、GMともに年300万台超を販売しており、トヨタの3倍以上だ。しかも両社は、中国で大規模投資を加速し、トヨタを引き離しにかかっている。広州の新工場は、VWやGMを追撃する戦略拠点ともいえる。

   一方、米国では景気回復基調を受け、需要はおう盛だ。メキシコは関税がかからない自由貿易協定を多くの国と結んでおり、輸出拠点として有利。既に日産自動車やホンダ、マツダなどが相次いで工場を新設している。北米はトヨタの大きな収益源だが、さらに生産能力を高め、GMのお膝元に攻め入る。

   もっとも新設する2工場を合わせても、能力増強分は30万台に過ぎず、「世界競争を優位に進めるには、まだ不十分」との指摘がある。一方、部品共通化を軸とした「TNGA」と呼ぶ新たな車両開発手法の導入も進めており、部品に不具合があればリコールの規模が一気に拡大するリスクもはらむ。質を保ちながら量をいかに拡大するかが問われることになる。

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