薬局やドラッグストアで販売されている薬による副作用が、5年間で1225例に上った。死亡例や後遺症が残った症例も報告されている。
定められた用法や用量どおりに服用したにもかかわらず、深刻な症状が現れたケースがある。市販薬が副作用を起こす恐れがある事実自体、広く知られていないようだ。
市販薬の「使用上の注意」には重篤な症状も想定
消費者庁は2015年4月8日、2009~13年度の5年間で市販薬による副作用の報告数は合計1225例と発表した。これは独立行政法人・医薬品医療機器総合機構に報告された内容に基づいた数字だ。うち死亡例、後遺症が残った症例がそれぞれ15例あった。
症例数が最も多かったのは総合感冒薬、つまり風邪薬で400例に達した。解熱鎮痛消炎剤が279例、漢方製剤が134例と続く。風邪薬による死亡例は、全体の15例中8例となった。
市販薬には、使用上の注意を書いた説明書が付いている。実際に複数の風邪薬の説明書を見ると、「副作用の可能性」について触れていた。服用後に皮膚の発疹やかゆみ、吐き気、めまい、顔のほてりといった症状が現れた場合は医師や薬剤師、薬の登録販売者に相談するよう促している。さらに重篤な症状も想定されている。肝機能障害やぜんそく、間質性肺炎と並んでアナフィラキシーやスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死融解症などだ。これらの中には、悪化すると死に至るものもある。
このうちSJSは、高熱や全身の倦怠感などの症状を伴って、口や目をはじめ全身に紅斑や水疱が多数現れる疾患。2012年11月19日放送の「クローズアップ現代」(NHK)では、解熱鎮痛剤を飲んだ後にSJSを発症したケースを紹介した。風邪気味だと感じた女性が、用法・用量を守って薬を服用した。だが3時間後には唇が腫れ、翌朝になると目が痛がゆくなり、さらに顔に発疹が現れて高熱が出たという。再度同じ薬を飲み、眼科や内科で診察を受けたが快方に向かわず、4日目には口の中が水疱だらけになり息苦しさを感じたそうだ。夜間急病センターに駆け込んだところ、SJSとの診断結果が出た。一時呼吸困難になるなど危険な状態に陥ったものの、一命は取り留めた。ただ、左目の視力をほとんど失うなど深刻な後遺症に見舞われてしまった。
同じ薬でも人によって合う、合わないがある
消費者庁は、「一般用医薬品の副作用症状についてはまだ多くの人に知られておらず、副作用の発見が遅くなるおそれがあります」としている。「使用上の注意」に書かれていても、あまり気にかけないまま薬を服用している人もいるだろう。
「クローズアップ現代」で取り上げられた女性の場合、以前飲んだことのある薬で副作用が現れた。健康体でも、過去に問題なかった薬でも、副作用のリスクがゼロとは言えないようだ。医療専門紙の記者はJ-CASTニュースの取材に、「薬には副作用があると考えておいた方がよいでしょう」と話す。
2014年11月の薬事法改正に伴い施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」では、国民の役割として「国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない」(第1条の6)と新たに定められた。薬を使う側が、説明書を読むなど自発的に安全かどうかを確認する努力をしなさい、というわけだ。
医療専門紙の記者はひとつの方策として、医療機関での処方薬の情報が記録される「おくすり手帳」の活用を勧めた。通院時に忘れず携帯して処方薬の履歴を管理しておき、薬局で市販薬を購入する際に薬剤師に見せてどの薬が適しているかを相談するのだ。「同じ薬でも人によって合う、合わないがあります。過去の服用記録を薬剤師が見れば、薬の安全性に関してある程度の手がかりがつかめるのではないでしょうか」。
いつ、どこで副作用のリスクに襲われるかは分からない。自己防衛のために意識を高めておくことが第一歩となる。