愛媛大学農学部の菅原卓也教授が、ミカンの皮とヨーグルトを同時に摂取すると花粉症の症状を和らげるとの研究成果を、学会で発表した。
いまや国民病ともいえる花粉症、身近な食品で少しでもつらい症状が防げるようになれば、患者にとっては朗報だ。
「ノビレチン」に花粉症の症状を緩和する効果と説明
菅原教授は2015年3月26~29日、岡山県で開催された「日本農芸化学会」で、「温州ミカン果皮配合ヨーグルトのアレルギー症状緩和効果の検討」との演題で発表した。注目なのは、花粉症を抑える可能性についての内容だ。
愛媛大学ウェブサイトの最先端研究紹介のページで、菅原教授の研究が紹介されている。地元を代表する農産物、柑橘類の果皮に注目して、免疫促進効果やアレルギー症状緩和効果、メタボリックシンドローム予防効果などを研究してきたという。そして、「温州ミカン果皮に多く含まれるフラボノイドの一種であるノビレチンには花粉症の症状を緩和する効果があるとともに,牛乳の成分であるβラクトグロブリンと一緒に摂取することによって,その効果が高まること」を明らかにした。
学会でもこの成果を発表。2015年3月30日付の読売新聞電子版によると、スギ花粉症患者26人に、牛乳成分を含む飲むタイムのヨーグルト150ミリリットルにすり潰したミカンの皮を混ぜたものを1日1回飲ませた。2週間後に花粉症の原因物質を両目に点眼し、30分後の症状を見たところ、飲み始める前と比較してかゆみなどの自覚症状が大きく低下。結膜炎の指標になる眼球表面の温度上昇も、約半分に抑えられたという。
菅原教授によると、「柑橘の機能性成分は果肉よりも果皮に多く含まれている」。ただ皮をそのまま食べるのは、味の面で厳しいかもしれない。そこで最近では、ミカンの皮を使ったジュースが開発されている。3月31日放送のフジテレビのニュースでは、東京・渋谷区のカフェで「花粉症対策スイーツ」があるとして、ミカンを皮ごと1個使ったヨーグルトジュースが紹介された。ほかにもミカンの皮を含めたゼリーなど、メニューを工夫しているようだ。
民間療法「有用性の確認に検討の積み重ね必要」
研究が進めば、身近な食品で花粉症対策ができるようになるかもしれない。これまでも「花粉症に効果がある」と世間で言われてきた食品はあるが、科学的な「有用性の確認」には至っていないのが現状だ。
厚生労働省のウェブサイトには、「花粉症の民間医療について」というリポートが掲載されている。2007年から成人6700人、小児1800人を対象に全国調査を実施したところ、成人では19%、小児9%の患者が、「医師が医療施設で行う医療以外」の民間医療を受けていたという。このうち食品による療法もあり、中でもヨーグルトや乳酸菌錠の使用頻度が増加している。ただし「一般医療機関を受診しているアレルギー性鼻炎患者さんの調査では、効果ありと判断されている方は30%以下です」としている。
またリポートでは、「最近は、お茶、乳酸菌、いわゆるサプリメントなどにも花粉症の症状の緩和作用が指摘されています......有用性の確認にはまだまだ検討の積み重ねが必要です」と結論づけている。
今回の「ミカンの皮とヨーグルトの効果」に関する研究発表について、J-CASTニュースの取材に応じたある耳鼻咽喉科医は、「ミカンの皮の効果については初耳です」と話す。もし患者が「ミカンの皮とヨーグルトを食べて花粉症に効くか、試してみたい」と望んだら、「体に悪影響を与えないなら『やってみて』と言うでしょう」。だが、現時点で医師の側から積極的に勧めることはないと話した。患者に紹介するとしたら、今後研究論文が何本も書かれ、海外の権威ある科学誌に掲載され、何年もかけて実際に効果を検証するプロセスが踏まれてようやく、となるそうだ。
とは言え、「食品で花粉症が防げるようになるなら、それに越したことはありません」と将来への期待を口にし、研究の進展に注目していくとも明かした。