新生銀行トップに51歳の工藤氏 「公的資金完済」に向けて「背水の陣」

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   新生銀行の新たな社長に、工藤英之常務執行役員(51)が就任することが発表された。約5年間、トップを務めた当麻茂樹社長(66)は2015年6月の株主総会を経て相談役に退く。

   保守的とされる銀行業界で51歳の社長就任は異例だ。大抜てきの裏には、大手行で唯一、公的資金完済のめどが立たない新生銀行が置かれた苦しい現状がある。

  • トップ若返りで「背水の陣」を敷いた(画像はイメージ)
    トップ若返りで「背水の陣」を敷いた(画像はイメージ)
  • トップ若返りで「背水の陣」を敷いた(画像はイメージ)

体調を理由に交代と説明

   「退任はもっぱら、体調が原因です」。当麻社長は3月25日、東京都内で開いた記者会見で、突然の社長交代理由についてこう述べた。2月に体調を崩して10日間の入院を余儀なくされたことを明かした上で、「故障を抱えながらマラソンを走り続けられない」と社長続投を断念したことを説明。自身と同じ旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身の工藤氏を呼び出し、後継候補への推挙を打診したという。当麻氏はさばさばとした口調で「5年間で新生銀行の方向性や価値観は作ることはできた。後顧の憂いもない」と語った。

   当麻氏は2010年に社長に就任。それ以前の新生銀行は、不動産投資と消費者金融を柱に据えていたが、2008年秋のリーマン・ショックで業績が悪化した。2008~2009年度に計約2800億円の巨額赤字に陥り、金融庁が後押ししていたあおぞら銀行との経営統合も破談。当麻氏は社長就任後、医療・介護分野への融資や企業再生ビジネスに注力し、経営の混乱を収拾した。

   だが、国が普通株の形で保有する2169億円の公的資金の返済はめどが立たないままだ。国が損失を出さずに新生銀行の株式を売却するには、株価が700円超に達する必要があるとされるが、年度末となった3月31日の終値は239円。収益力を上げ、成長期待を高めて株価を大きく引き上げなければ、返済の道筋は見えてこない。

新社長の経営手腕は未知数

   金融庁も新生銀行の現状に厳しい目を注ぐ。金融庁は昨年秋から新生銀行に検査に入り、経営戦略やガバナンス(企業統治)面での課題を指摘。安定成長に向けた抜本的な経営改革が必要との認識を示したという。


   折しも、大手行では、りそなホールディングス、あおぞら銀行が公的資金の前倒し完済に道筋をつけつつあり、完済のめどがついていないのは新生銀行だけ。同行の「周回遅れ」が鮮明になっている。追い込まれた新生銀行は、トップの大幅な若返りによって「背水の陣」を敷いた形だ。

   当麻氏の後を継ぐ工藤氏は、銀行勤務の後、証券会社や企業再生ファンドなどで不動産流動化や事業再生ビジネスに携わり、行内外でその手腕を評価する声は多い。当麻氏から請われて新生銀行へ転じたのは5年足らず前で、年齢も大手行トップでは若い51歳と異例づくしだ。

   工藤氏は記者会見で「メガバンクや地方銀行と違う、顧客に必要とされる銀行になる」と述べ、独自のビジネスモデルを追求して存在感を高める考えを強調。資産運用や事業再生ビジネスを強化するとともに、アジアでの提携戦略も進めていく方針を示した。

   ただ、若いだけに経営手腕は未知数。新生銀行の公的資金返済のハードルは極めて高く、どう乗り越えるのか注目される。

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