政権内で対立、泥仕合
ところが与党の一部などから「合議制の導入は、機動的な運用の足かせになりかねない」と、今国会への法案提出に慎重な声が噴出。安倍晋三首相は2月、塩崎厚労相に対し、関連法案の今国会提出を見送るよう指示した。背景には塩崎厚労相と官邸・厚労省年金局ら事務方の意見対立・確執があると指摘される。
運用のプロとして、GPIFの新設ポスト「最高投資責任者(CIO)」に年明けに就任した水野弘道氏の選定をめぐり、水野氏をプッシュした世耕弘成官房副長官と、難色を示した塩崎厚労相が激しく対立したのが昨年秋。双方がリークしたとささやかれる記事がそれぞれ別の雑誌に掲載されるなど泥仕合の様相に。菅義偉官房長官は塩崎厚労相批判を強め、厚労省事務方も官邸に組織改革先送りを働き掛けたという。最終的に「塩崎さんは孤立無援の状態」(与党関係者)になり、元々塩崎氏とお友達とされる首相も「今国会での改革は困難」と判断したようだ。
人事が三谷氏の再任に落ち着いたのは消極的な選択だろう。組織改革の行方が不透明で、任期5年とはいえ、新組織への移行となれば、1、2年で交代という「ショートリリーフ」の可能性があるため、新たな引き受け手を探すのが困難だった。また、三谷氏が塩崎厚労相と年金局の対立の中でも中立的な姿勢を維持してきたといい、官邸を含め受け入れやすかったという事情もあった。
組織改革問題は引き続き、社保審の年金部会で議論されるが、どのように決着するかは見通しが立っていない。