遺伝子治療に実用化の期待 セミナーで最新動向が紹介される

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   遺伝子治療の研究が着実に進んでいる。

   東京大学医科学研究所の小澤敬也病院長は2015年2月末、日本のベンチャー企業アンジェス主催のセミナーで「遺伝子治療の最新動向~いよいよ実用化が目前に」と題して講演、日本の研究者やメディアの注意を喚起した。

  • 遺伝子治療の6割はがんが標的(画像はイメージ)
    遺伝子治療の6割はがんが標的(画像はイメージ)
  • 遺伝子治療の6割はがんが標的(画像はイメージ)

2008年ごろから成功例が増えはじめる

   遺伝子治療は1990年代に注目を集めたが、1999年に死亡例が出た後、2002年に患者が白血病を発病し、大きかった期待が急速にしぼんだ。しかし、遺伝子を運ぶウイルスを、それまでより安全なレンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に変えるなどの研究が進展し、2008年ごろから成功例が増えはじめた。

   小澤さんによると、造血幹細胞に遺伝子を組み込む従来法でも免疫不全症のX-SCIDやADA欠損症などで有効率が高まった。また、パーキンソン病、小児のAADC欠損症などはAAVの使用で安全性、有効性とも格段に向上した。

   日本では1995年に北海道大病院でADA欠損症治療が試みられたが、その後も挑戦が続いている。小澤さんらは自治医大病院で、特定の酵素不足で薬の効きが悪くなった 6人のパーキンソン病患者を治療した。酵素を作る遺伝子をAAVに組み込み、患者の脳に注射する。10年ほどは効果が続く。

   遺伝子治療の6割はがんが標的だ。免疫細胞のT細胞に「キメラ抗原受容体」(CAR)を組み込んで免疫力を高める新たな方法で、リンパ性白血病や慢性リンパ腫が治せる可能性があり、注目を集めている。実用化が近づいた遺伝子治療の普及の鍵は他の治療法との有効性と価格面での競争になりそうだ。

   アンジェスはHGFの遺伝子治療薬を開発している。HGFは1984年に日本で発見された肝細胞増殖因子だが、肝臓以外のさまざまな細胞も増やす。閉塞性動脈硬化症、バージャー病など足の血液不足からの重症虚血肢では血管を増やして改善する。

   アンジェスの治療薬は大腸菌のプラスミド(リング状のDNA)にヒトHGF遺伝子を組み込んだ注射薬で、重症虚血肢の足に注射する。国内では医師主導で、海外では約500人の患者を対象にした国際的な臨床試験が進行中だ。

   山田英社長は「改正薬事法の早期承認制度を活用し、国内の遺伝子治療薬第1号にしたい」とし、2016年前半までに承認申請を予定していることを明らかにした。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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