大阪桐蔭中学・高校の裏金問題で、解明のカギを握る教員用パソコンについて学校側が発覚直前に突然壊れたと主張して、物議を醸している。
この問題では、20年以上前から5億円以上の裏金が作られ、学習塾経営者への接待のほか、ブランド品購入、ゴルフ代などにも使われたことが分かっている。
「なぜ都合良く壊れるのか」「証拠隠滅か」
塾接待は、学校の進学実績を上げるため、優秀な子供に学校に来てもらうのが目的だった。受験先は塾の意向に左右される傾向があるからだ。とはいえ、裏金は学校のためばかりではなく、私的な目的のために使われていた疑惑も浮上している。
100万円のブランドバッグ、数十万円のアクセサリー、エルメスのスカーフ...。デパートでのブランド品購入だけで、なんと1億円近くも注ぎ込んでいた。こうした支出が公私混同ではないかという疑いの目を向けられているのだ。
隠し口座も複数あったとされ、学校を運営する大阪産業大学が調査を依頼した第3者委員会でも、その証拠探しに追われた。
ところが、3月25日に発表された第3者委の報告書によると、前進路指導部主事は、ヒアリング調査に対し、裏金管理に使っていた教員用パソコンが14年9月ごろに突然壊れてしまったと主張した。これは、教職員組合と大学との翌月の団体交渉で裏金が発覚する直前のことだ。この主事は、すぐに業者に壊れた原因の調査やデータの回復を依頼したというが、業者からは、原因は不明であり、データ回復もできないと言われたと、第3者委に説明した。
こうした学校側の説明に対し、ネット上では、疑問や異論の声が噴出している。
「なぜ都合良く壊れるのか」「証拠隠滅か」「小学生みたいな言い訳するなw」...
警察の捜査で初めて真相の解明が進む?
裏金問題の解明に向けて、証言や証拠を集めるためのネックになっていることがまだある。
隠し口座などを知っているとみられる大阪桐蔭の前事務長が、体調不良を理由にして、第3者委員会のヒアリング調査に応じていないのだ。第3者委では、ヒアリングは難しいとみて、書面での回答を求めたが反応はなかったという。
25年以上も務めた前校長は、裏金作りのキーマンとされているが、ヒアリング調査には応じたものの、報道によると、学校が本人に連絡を取れない状態になっているという。
第3者委の委員長だった畠田健治弁護士は、パソコンが壊れた原因について、「ドリルで穴を開けたとか、水をかけたとかいった痕跡は見つからず、結局なぜかは分からなかった」と話す。データの修復もできなかったといい、バックアップを取っていたかと聞くと、前進路指導部主事は、「取っていない」と答えたという。
ヒアリングに応じない前事務長については、「診断書はもらえませんでした。どこまで本当かは分かりませんが、体調不良で書面も見られるような状態ではないとは聞いています」と話した。
第3者委の報告書では、大阪産業大は前校長らの刑事告訴を検討すべきだとしている。もし個人的な目的で裏金を使ったとしたら、業務上横領罪に当たるというのだ。証言や証拠がなかなか集まらない以上、警察の捜査によって初めて真相の解明が進むのかもしれない。
大阪産業大の学園広報課では、今後について、前校長らの刑事告訴を含めて検討する考えを取材に明かした。大学理事長らで作る対応委員会が4月末までに告訴などの対策を盛り込んだ報告書をまとめるとしている。