主要国の銀行監督当局者でつくるバーゼル銀行監督委員会で、銀行が持つ国債などの金利上昇リスクに対し、自己資本の上積みを求める新たな規制案が議論されている。
近くたたき台が示される方向だが、新規制が導入されれば、大量の国債を保有する邦銀への打撃は大きくなりそうだ。銀行が資本を増強する代わりに国債を売却すれば、国債価格の暴落を招いて財政危機を引き起こす恐れもあり、銀行業界は戦々恐々としながら議論の行方を見守っている。
国債保有量に応じ、大幅な資本増強か、資産圧縮
バーゼル銀行監督委員会が議論しているのは、銀行が保有する資産の価格が金利急騰によって下落した場合に備えて、予め自己資本を厚く積んでおくという案だ。金利が急騰(国債価格が急落)すれば、国債を保有する銀行は含み損を抱えてしまう。また、長期間の固定金利で貸し出した住宅ローン債権も、金利が急騰すれば「逆ざや」となり、銀行経営の悪化要因となる。このため、金利が一定程度上昇した場合に発生する損失額をその資産の「リスク量」として算出し、それに見合った資本を銀行に上積みさせる議論が英国やドイツ主導で進んでいるのだ。
この状況に動揺を隠せないのが、大量の国債を保有する邦銀だ。もし、英国やドイツが主張するように資本上積みの数値基準を義務づける案が通れば、基準を達成するため、国債保有量に応じた大幅な資本増強か、資産圧縮を迫られる。全国銀行協会の平野信行会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は3月19日の記者会見で、短期の売買目的でなく、満期まで保有する前提の国債にまで規制をかけるべきではないと主張。銀行が自己資本比率を上げるために企業などへの貸し出しが抑制される恐れがあるとして、「金融規制の仕方を間違えると思わぬ結果を招くことになる」と訴えた。