欧米の大企業は積極的
欧米ではIBM、インテル、フィリップス、シーメンス、ユニリーバ、P&Gなど旧来からある大企業がオープンイノベーションで技術革新に成功した先例として知られている。「欧米の大企業は積極的にベンチャー企業と協業し始めている。共同開発契約を結んだり、知的財産のライセンスを結んだり、直接投資を行ったり、ベンチャーを買収したりしている」という。
日本もこの動きに遅れまいと必死だ。安倍晋三首相は「チャレンジ、オープン、イノベーション。これが私の成長戦略の一貫した基本理念だ」と述べ、オープンイノベーションをアベノミクスの成長戦略のひとつに位置づけている。
しかし、オープンイノベーションで成果を出すには課題も多い。トヨタが燃料電池車の特許を無償で公開しても、その特許を活用して参入するだけの資金や技術を持ったメーカーは世界的に限られるだろう。「シリコンバレーのように、大手企業と組めるだけのアイデアや技術力のあるベンチャー企業も、残念ながら日本国内には少ない」(IT業界関係者)という事情もある。
シャープやパナソニック、日立製作所など大手企業は社内にオープンイノベーション推進室などの専門部署を続々と設けている。専門家は「本社がすべてをコントロールしようとする中央集権型の日本企業の体質は、イノベーションの実現を妨げる可能性があり、変革が起こりにくい。日本企業は顧客を非常に大切にするため、結果として新しい顧客層に目が向かない傾向がある」と指摘する。
とはいえ、日本でも富士フイルムのように旧来のビジネスモデルから脱却し、技術革新に成功した企業もある。「主力のフィルムビジネスが有望でないことに気付き、医療関係など新しいビジネスに踏み切った富士フイルムと、フィルムにこだわり続けて倒産した米コダックは対照的だった。長い目で企業の将来を見つめ、必要な改革を行うことが重要だ」と専門家は指摘している。