自社の特許などを公開し、他社を巻き込んで新たな市場を開拓する「オープンイノベーション」と呼ばれる技術革新が注目されている。パナソニックはインターネットに接続できる家電など「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれる分野で、保有する関連特許を無償化するという。自社の特許を他メーカーに利用させることで、新たな製品開発やサービスで主導権を握る狙いがあるとみられる。
メーカーの特許をめぐってはトヨタ自動車が2015年1月、燃料電池車の関連特許を無償化すると発表したばかり。これまで自社開発にこだわり続けた日本企業だが、ここに来て欧米が先行するオープンイノベーションに追随せざるを得ない事情があるようだ。
これまで自社グループ内で完結
日本企業は1980年代から1990年代にかけ、ソニーのウォークマン、トヨタ自動車のプリウスに代表されるような革新的な商品を開発し、もの作りで世界をリードしてきた。これは研究開発から商品化、市場開拓まで自社グループで行う垂直統合型の技術革新で、クローズド(閉鎖された)イノベーションと呼ばれるビジネスモデルだ。トヨタなど一部の日本企業は現在も強い技術力を維持しているが、電機業界やIT業界では日本企業が技術革新で遅れをとり、グーグルやアップルなどの後塵を拝している。
これは日本企業が自社開発した特許などの囲い込みに走り、世界的な潮流となったオープンイノベーションの流れに乗り遅れたことが要因のひとつという。「日本企業は従来から米国と比較してITを戦略的に活用する意識が弱い」とされるが、あらゆる情報がデジタル化され、インターネットを通じてつながるIoTが実現すると、車や家電などがネットワークにつながり、そこから収集されるビッグデータを活用することで、様々な新商品やサービスの誕生が期待される。しかし、「先端技術ほど市場が見えにくく、必要な補完技術もわかりにくい。事業化プロセスをいかに時間短縮できるかが成功の鍵を握る」という。
そこで期待されるのがオープンイノベーションだ。企業が自社開発の技術だけでなく、他社の特許やアイデアを組み合わせることで、革新的で新しい商品やビジネスモデルを創り出すことができるからだ。特許を公開するだけでなく、大企業がアイデアや技術力のあるベンチャー企業や大学などと組み、新たな発想を取り入れることも技術革新だ。