「踊り場」を突き抜けることができるか
リーマン・ショック後、日本の自動車メーカーは一様に株価を下げたが、円安などによる業績回復で株価が上昇した。ただ、上場来高値更新にまでいたったのはトヨタ以外では、米国への輸出が好調な富士重工業と国内で軽自動車が売れまくっているスズキとダイハツ工業に限られる。市場のトヨタに対する期待の大きさをうかがわせる。証券会社のアナリストはトヨタの「目標株価」を公表しているが、中には早くも「1万500円」(野村証券)、「1万円」(SMBC日興証券)との声も出始めている。
こうした中、トヨタは3月29日、名古屋市内で初の個人投資家向け説明会を開催した。1万3000人の応募者から選ばれた3500人が参加し、「もっともっといいクルマをつくる」と訴える豊田社長の肉声に耳を傾けた。トヨタ株を保有する個人投資家は60万人に及び、全体の株式数の1割強を占めるが、個人投資家数は減る傾向にあるという。安定保有してもらおうという狙いもあったようだ。
ただ、外国為替相場は1ドル=120円前後で円安も落ち着いた。国内市場は縮小が見込まれ、世界一の中国市場は独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズの後塵を拝す。「踊り場」を脱する次の一手が見えないままでは、「トヨタ株1万円」は厳しい可能性もある。