トヨタ自動車の株価が2015年3月17日の取引時間中に上場来高値を更新し、その後もかつてない高値圏で推移している。2015年3月期に過去最高益が見込まれるなか、「意志ある踊り場」(豊田章男社長)を脱する再成長が期待されているようだ。
ただ、期待先行感も強いだけに、「弱材料が出ると株価もするする下がる可能性がある」(外資系証券)との指摘も聞かれる。
11年11月には2000円台だった
トヨタ株の上場来高値更新は約8年ぶりのことだった。それ以前の最高値は2007年2月27日の8350円。トヨタ株は今年に入って上昇傾向が続いていたが3月17日午前の取引時間中、8369円まで上昇して高値を突き抜けると、市場に驚きが広がった。
トヨタは2007年に過去最高値をつけて以降、さまざまな試練に見舞われた。2008年秋のリーマン・ショックで世界的な自動車需要の「蒸発」に直面。米国での大規模リコール(回収・無償修理)問題が追い打ちをかけ、2010年2月には豊田社長が米国の従業員の前で涙を流す一幕もあった。それでも少しずつ立ち直りつつあった中で2011年3月には東日本大震災が発生。部品供給網が途絶し、生産体系がもろくも崩れた。これらと同時進行した外国為替相場の円高・ドル安に歯止めがかからなかったことも業績を直撃し、トヨタの株価は2011年11月に2330円にまで沈んだ。
安倍政権発足によって外国為替相場が円安・ドル高に猛烈に転換したことを好材料に、輸出産業の代表選手であるトヨタ株はぐんぐん上昇。グループの年間世界販売台数が2012~14年まで3年連続首位を獲得するなか、2014年には初めて世界販売台数が1000万台を超え、株価上昇に拍車がかかった。
黒田日銀の追加緩和が引き寄せたさらなる円安なども追い風に、2015年3月期の連結営業利益は前期比18%増の2兆7000億円と過去最高を更新する見込み。純利益も17%増の2兆1300億円と過去最高更新を見込む。
春闘も株価を押し上げた。トヨタは今年の春闘でベア4000円を回答、現行の要求方式となった2002年以降で最高を記録した。年間一時金は5年連続の満額回答で、246万円とうらやましい限り。経営には人件費負担が重荷になりそうだが、市場はむしろ「人材力を高めることで将来の成長を見通せる」(国内証券大手)と好感。「4000円」情報が市場に浸透する中で上場来高値をつけるに至った。