ノーベル文学賞候補にもなった谷崎潤一郎(1886~1965)が初めて書いたとされる創作ノート「松の木影」が、中央公論新社で、写真(印画紙255枚)の形で発見された。代表作「春琴抄(しゅんきんしょう)」「細雪(ささめゆき)」の構想などが記され、研究者は「超一級の資料」としている。
ノートは、内容から1933年2月~38年半ばのものと推測される。<春琴九才ノトキ失明ス>などと「春琴抄」の設定が箇条書きされるなど、実作品につながるエピソードや話の粗筋が見て取れる。戦時中、空襲によるノートの焼失を心配した谷崎が撮影し、親友の笹沼源之助に預けたものだという。
中央公論新社が2016年9月に刊行する予定の「谷崎潤一郎全集」第25巻に、全文が収録される。