敦賀気比を導いた「ふたりのシンデレラ」 エースの素質見抜いたのは小林繁さんだった

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   今年の選抜高校野球大会は敦賀気比が優勝(2015年4月1日)し、福井県はもちろん北陸初の快挙。

   それもドラマチックな戦いで、野球シーズン到来にふさわしい盛り上がりとなったった。

  • 福井県勢初制覇で、熱戦の幕を閉じた甲子園
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強豪・石川県を押さえて福井県「してやったり」

   優勝が決まると、地元の福井新聞は号外を出した。

 
「敦賀気比V」

   真横に大見出し。その下にスコア。さらに「北陸勢初の快挙」「松本決勝弾」の大きな文字が並んだ。

   北陸代表は、夏の選手権、春の選抜と、どうしても優勝できなかった地域のひとつだった。同じような状況に長くあった沖縄は、春夏連覇を達成するなど、いまでは強豪とみられている。

   全国制覇は北陸の悲願だった。北陸といえば、石川県勢が強いという印象が強い。巨人、ヤンキースで4番を打った松井秀喜の母校ということで星陵の名がよく知られる。それだけに福井県としては、してやったり、との思いだろう。

   その歴史的快挙をもたらした打のヒーローが号外に名前が出た松本哲幣外野手である。決勝の東海大四戦でスコア1-1で迎えた8回裏、2点本塁打を左翼席に放ち、優勝を決めた。彼は準決勝で2打席連続満塁ホームランという史上初の活躍を見せ、昨年夏を制した大阪桐蔭の夏春連覇の夢を砕いた。

「自分のことではなく、他の人のことを見ているみたい」

   松本は背番号17の控え選手で、スーパーマンのような猛打にはチームもびっくりした。この活躍で日本代表メンバーにもノミネートされた。まさにシンデレラボーイとなった。

「ニュースで騒がれてびっくりしています。自分のことではなく、他の人のことを見ているみたいです」
「決勝戦のホームランは(大阪桐蔭戦の)2本より完璧でした」

   福井に凱旋した4月2日の優勝報告会で松本は笑顔でそう振り返った。投手で入部したが、同級生で優勝投手となった平沼翔太を見て野手になったという。

   その平沼の素質を見抜いたのは、巨人や阪神でエースとして活躍した故小林繁さんだった、と福井新聞はエピソードを紹介している。小林が少年野球の指導者をしていたとき、小学校6年生の平沼が体験練習にきたとき、その素質を見抜いたというのである。

   小林は現役を引退すると、プロ野球のコーチやスポーツキャスターなどを務めた。その後、福井県に移り、ゴルフ場に勤めたりした。そのときに少年野球に関わり合った。

   東哲平監督もユニークな経歴を持つ。敦賀気比での選手時代に甲子園に春夏合わせて3度も出場している。社会人野球に進んだものの2年で辞め、故郷の京都府でアルバイトで生計を立てていたという。その後、福井県に戻り、少年野球の指導者を経て現在の職に就いた。

   決してエリートの野球人生ではなかった。そういう意味では、東も大きなチャンスをモノにした、いわば「シンデレラおじさん」といえよう。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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