任天堂とディー・エヌ・エー(DeNA)が業務・資本提携することになった。これまで距離を置いていたスマートフォン向けゲームや、会員制サービスを共同開発する。強力タッグが、ゲーム業界に新風を巻き起こすことができるか、注目されそうだ。
両社が2015年3月17日に発表した。それによると、それぞれ約220億円ずつ出資し、任天堂はDeNAの発行済み株式の1.24%、DeNAは任天堂の10%をそれぞれ取得する。これにより任天堂は、DeNA創業者の南場智子氏の13.1%(2014年9月末現在)に次ぐ大株主に浮上する。
柱の一つはスマホ向けゲームアプリの共同開発
業務提携の柱は二つある。一つは、「マリオ」など任天堂のキャラクターを含む知的財産(IP)を活用した、スマホ向けゲームアプリの共同開発だ。任天堂は「マリオ」などに接する機会を増やし、ゲーム専用機への誘導も狙う。DeNAも「マリオ」などを活用し、主力のモバイルゲーム事業をグローバルに強化できる。
もう一つは、任天堂のゲーム専用機だけにとどまらない、スマホやタブレット端末、パソコンに対応した基幹システムの構築だ。15年秋には、新たなシステムを利用した会員制サービスを始めたい考えだ。
両社に共通するのは、スマホ向けサービスに出遅れていること。任天堂は1983年の「ファミリーコンピュータ」発売後、ハードとソフトを一体で販売するビジネスモデルを強みとしてきた。ただ近年は据え置き型の「Wii U」や携帯型の「ニンテンドー3DS」などの販売が低迷し、2014年3月期まで3期連続の連結営業赤字に陥っている。
スマホ向けゲームは新陳代謝が激しい
一方、DeNAは従来型携帯電話向けの「モバゲー」で成長したが、より多機能なスマホ向けでは遅れをとった。スマホ向けでは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」や、ミクシィ「モンスターストライク」の後塵を拝しており、2015年3月期の連結営業利益は前期比53.4%減の248億円にとどまる見通しだ。
スマホ向けゲームは新陳代謝が激しく、陳腐化するのも早い。だが消費者の変化に対応するためには、両社ともスマホに注力せざるを得ないと判断したようだ。
記者会見した任天堂の岩田聡社長によると、DeNAの守安功社長と初めて合ったのは2010年6月。「モバゲーに任天堂のIPを供給してもらえないか」と提案があったという。その後も継続的に話し合いを持ち、今回の提携に至った。
「同じゲームを専用機からスマホ向けに移すだけは、客は満足しない」(岩田社長)ことから、まったく同じゲームは出さない予定。ゲーム開発は任天堂が主導し、ウェブサービスやサーバー運営などはDeNAの知見を生かす。任天堂は専用機へのこだわりを捨てたわけではなく、来年には新たな専用機を発表する計画だ。
発表翌日の3月18日、東京株式市場では、両社株ともにストップ高水準まで買われた。投資家の期待感は大きいが、任天堂にとっては、専用機とスマホで、自社の顧客を奪い合うのではという懸念もある。本当に相乗効果を生み出せるかは未知数だ。