関電などの老朽原発廃炉は「脱原発」とは違う 比較的出力が大きなものは運転延長求める

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   関西電力など大手電力会社が、運転開始から40年を超える老朽原発を廃炉にするか、政府に運転延長を求めるかの選別に動き出した。今回対象となる全国の老朽原発7基のうち、5基が廃炉となり、国内の原発は現行の48基から43期となる。東京電力福島第1原発事故を受け、政府が原発の運転を原則40年と定めた「40年ルール」に基づく措置で、原発事故後に廃炉が決まるのは、事故を起こした東電福島第1原発以外では初めて。

   しかし、電力会社が廃炉とするのは出力の小さな老朽原発で、出力80万キロワットと比較的大きな原発は20年の運転延長を求めている。今回の廃炉決定は「脱原発」とは一線を画したものだ。

  • 廃炉は脱原発と「一線を画する」(画像はイメージ)
    廃炉は脱原発と「一線を画する」(画像はイメージ)
  • 廃炉は脱原発と「一線を画する」(画像はイメージ)

原発の運転期間を原則40年間と定めた

   関西電力は今回、40年超となる原発3基の運転延長を求めたほか、廃炉と引き換えに新たな原発を建設するリプレース(置き換え)を断念していない。2016年4月にスタートする電力の全面自由化は原発にとって逆風となるが、自民党政権の対応しだいでは原発の依存度を維持するため、原発の新増設が進む可能性もある。

   原発事故後、政府は原子炉等規制法を改正し、原発の運転期間を原則40年間と定めたものの、電力会社は最長20年の運転延長を申請できることにした。政府は今回、1970年代前半に運転を開始した老朽原発7基について、廃炉か運転延長を決断するよう電力会社に求めていた。

   これを受け、電力会社が廃止を決めたのは、関西電力美浜原発1、2号機(34万キロワット、50万キロワット)、日本原子力発電敦賀原発1号機(35.7万キロワット)、九州電力玄海原発1号機(55.9万キロワット)、中国電力島根原発1号機(46万キロワット)の5基。一方、20年の運転延長を申請するのは、7基中残る2基に当たる関西電力高浜原発1、2号機(各82.6万キロワット)と、2016年で40年を迎える美浜原発3号機(82.6万キロワット)の計3基だ。

   廃止か運転延長かの選別は、電力会社の経営判断による。20年の運転延長を目指すには、原子力規制委員会の新規制基準に基づき、1基当たり1000億円規模の安全対策が必要になる。これに比べると、廃炉の費用は1基当たり210億円程度と少ないうえ、運転停止から10年間で減価償却できるよう会計制度が改正されるなど、電力会社にとって廃炉の負担は軽くなった。

安全対策のコストを回収できると判断すれば運転延長

   このため電力会社は安全対策のコストを20年で回収できると判断すれば運転延長を求め、できないものは廃炉と判断した。各社とも出力50万キロワット程度と小型で、最新型の半分程度の原発については廃止し、80万キロワットを超える原発については運転延長を求める――といった暗黙のルールが電力会社の間にできたのは間違いない。このため、次に廃炉となるのは、2017年に40年を迎える四国電力伊方原発1号機(56.6万キロワット)とみられている。

   しかし、その後に40年を迎える原発の行方はわからない。2018年には日本原電の東海第2原発(110万キロワット)、2019年には関西電力の大飯原発1、2号機(各117.5万キロワット)と100万キロワット級が続く。50万キロワット級の原発も伊方原発1号機のほか、1981年運転開始の九州電力の玄海原発2号機など5基あるが、必ずしも廃炉になるとは限らない。電力会社としては安全対策の追加コストをかけてもペイするなら、初期投資の回収が済んだ原発を長く使いたいのが本音だろう。

廃炉と引き換えに新たな原発の建設を求める声

   もちろん電力の全面自由化で、1基当たり4000億~5000億円の初期投資がかさみ、放射性廃棄物の処理のめどが立たない原発を新たに建設するのは、電力会社にとってリスクとなるのは間違いない。しかし、電気事業連合会の八木誠会長は「40年を超えるプラントも含め、安全が確認された原発の有効活用、新増設・リプレースなどを重要政策として、着実に推進していただきたい」と、再三にわたり政府に求めている。宮沢洋一経済産業相は5月をめどに決める2030年の電源構成(エネルギーミックス)の策定に当たり、「現時点では、新増設リプレースも含めて、想定していない」と述べているが、政府内では原発の依存度を2割程度維持する方向で検討が進んでいる。廃炉と引き換えに新たな原発の建設を求める声は電力会社や立地自治体に根強い。

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