創業者で筆頭株主の父・大塚勝久氏と長女の久美子社長のあいだで経営権をめぐる対立が続いていた家具・インテリア大手の大塚家具は、定時株主総会で久美子社長らを取締役に選任する会社提案を可決して幕を閉じた。
取締役10人中6人が社外取締役、監査役も3人全員が社外監査役と、久美子社長はガバナンス体制としては「国内最高レベル」の体制が整ったと胸を張る。あとは今回のゴタゴタを早急に払拭して業績回復を図ることになるが、そう簡単にはいきそうにない。
「ききょう企画」は長男のための会社?
一般株主だけで約200人が出席した2015年3月27日の大塚家具の株主総会。注目された、父・大塚勝久氏と長女・久美子社長の経営権争いは、16万5340の議決権行使数に対して、会社提案への賛成票(久美子社長側)が61%と過半を占めた。
勝久氏側は36%しか支持を得られず、自身を取締役に選任する株主提案は否決された(約3%は棄権)。
これにより久美子社長の続投が決まり、「名実ともに新体制」のもと、株主、顧客の信頼回復に努めることを宣言。会長職を退任した勝久氏は、「このたびの騒動に関しては、すべて私の不徳の致すところでございます。心からおわび申し上げます。株主の皆様のご判断を真摯に受け止め、まっさらな気持ちで出直します」とコメントした。
とはいえ、多くのメディアが「久美子社長側の圧勝」を伝えたものの、会社経営や業績回復はそれほど容易いものではない、との見方は少なくない。なにより勝久氏が発行済み株式の18.04%を保有する筆頭株主でもあることは変わらず、なお騒動の火種がくすぶっているとみられているからだ。
そうした中で、今回の委任状争奪戦で注目を集めたのが「ききょう企画」なる、大塚家具の資産管理会社の存在だ。
繊維会社の4代目社長という後藤百合子氏がBLOGOS(2015年3月29日)に寄せた「久美子社長が社長を辞められなかった本当の理由」では、ききょう企画はもともと勝久氏と妻の千代子氏が長男の勝之氏のためにつくった会社ではないか、と推察。長男の勝之氏がききょう企画の株式を約50%保有していたことがその証とみている。
週刊朝日(2015年4月7日号)に寄せた勝久氏の手記によれば、勝久氏は「長男が保有する株式を久美子社長と他の弟妹に分配した」と語っている。そのために勝久氏は大塚家具の130万株をききょう企画に移して、その代わりに15億円分の私募債を引き受けたとされる。これがどうなるかも焦点の一つだ。
15億円の株式返還訴訟はなお継続中
大塚家具の2014年度有価証券報告書によると、ききょう企画が保有する大塚家具の株式は9.75%で勝久氏に次ぐ第2位。2015年1月には勝之氏が取締役から、また千代子氏が監査役から外れた。ききょう企画の社長には現在、久美子社長が就いていることから委任状争奪戦では社長支持にカウントされた。
それもあってか、勝久氏は2015年2月25日に、ききょう企画が保有する大塚家具の株式を久美子社長が違法に支配としたとして、15億円の株式返還を求める民事訴訟を東京地裁へ起こした。
株主総会後に「ノーサイド」を告げた久美子社長だが、こちらは現在も係争中だ。
株主総会前には、勝久氏や妻の千代子氏、長男・勝之氏で20.08%の株式を保有。主要な取引先で株主でもあるフランスベッドや、従業員持ち株会も半数が勝久氏支持にまわったと伝えられた。
一方、久美子社長側には、米ファンドのブランデス・ インベストメント・パートナーズが支持を表明。ききょう企画の9.75%とあわせて19.99%を集めていたが、メディアの一部は久美子社長側のやや劣勢を報じていた。
訴訟のゆくえによっては、もうひと波乱あるかもしれない。