英独仏は人民元の取引市場を自国内に整備したいとの思惑
中国と地理的に離れ、日本ほど脅威を感じない欧州諸国は、景気低迷もあって、AIIB参加を通じて中国との経済関係を強めるとともに、アジアでのインフラ整備事業に参加しやすくなるとの期待がある。総選挙が近い英国が先陣を切って参加表明したのは、まさに実利優先の発想だ。また、英独仏は、中国の通貨・人民元の取引市場を自国内に整備したいとの思惑もある。
現在、にわかにAIIB参加問題が世界でクローズアップされるのは、中国が3月末までに参加表明した国を「創始メンバー」として扱う意向を示しているからだが、それぞれの思惑の一方で、"弱み"もあって、複雑な展開になってきている。
日本はAIIB運営面の問題点について中国側に照会中といい、麻生太郎副首相兼財務相は20日の会見で「(透明性が確保された場合には)協議する可能性はある」と述べ、参加の可能性に言及したものの、24日の会見で「我々の出している問いに答えがない以上、参加ということは難しい」と、軌道修正し、状況を見極める姿勢。インフラ輸出は安倍内閣の成長戦略の柱の一つだが、経済界はアジアのインフラ整備事業への参加で「(AIIB不参加で)日本企業が競争上不利にならないような対応や配慮が必要だ」(榊原定征経団連会長)と懸念する。
米政府は硬軟両様の構えを示し始め、「国際金融の強化につながる新たな多国間機関を歓迎する」(シーツ米財務次官=国際問題担当)と、世銀やADBとの協調融資など具体的な連携を促す姿勢も見せる。