中国は経済的な影響力拡大が第一の狙い
こうした一連の動きの背景には、各国の複雑に入り混じった理屈や思惑がある。
日米の理屈は、融資などAIIBの意思決定の透明性確保という問題だ。日米が主導するADBの場合、日米を含む12カ国で構成する理事会が融資案件を審査する。恣意的な融資、環境破壊につながる融資などを排除するための仕組みで、日米にはこれが「国際標準」であり、3月22日に北京で開かれた経済フォーラムで中尾武彦ADB総裁がこのことを指摘した。対する中国の理屈は、AIIBでは迅速な意思決定を重視するということだ。楼継偉財務相は同じフォーラムで「西側のルールが最善とは限らない」と言い切っている。
英国など欧州主要国は、透明性の必要については日米と共通の認識だが、「むしろ参加してAIIBのルール作りに関与し、透明性確保に努める」との現実的な判断とされる。
もちろん、表向きの理屈だけではない。中国は経済的な影響力拡大が第一の狙いで、経済産業省関係者は「米国が主導する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が中国包囲網だと警戒しており、これを牽制し、金融面から対抗しようとの思惑があるのではないか」と分析する。「中国国内のインフラ整備一巡でだぶつく鉄鋼やコンクリートの手っ取り早い輸出先を求めている」(国際貿易筋)との指摘もある。
日米は中国の政治的、経済的な影響力拡大を警戒。特に軍事力拡大を進める中国の動きに神経をとがらせる日本は、南シナ海で中国の脅威に直面する東南アジア諸国がAIIBを通じて経済的に中国に取り込まれるのに、何とか歯止めをかけたい立場だ。