軽自動車に本格的なスポーツモデルが相次ぎ復活している。スズキは軽自動車「アルト」に15年ぶりとなるターボエンジン搭載する「アルト ターボRS」を発売した。名称こそ異なるが、このモデルはバブル期の1987年に登場し、当時の若者に人気だった「アルトワークス」の事実上の後継モデルとなる。
ホンダは同じくバブル期に登場した「ホンダビート」の後継となる2シータースポーツカー「ホンダS660」を今春発表。2014年6月に復活した2代目ダイハツコペンと合わせ、日本のこの市場はバブル期以来の活気を取り戻しそうだ。
アルト ターボRS「力強く胸のすく加速を実現した」
スズキのアルト ターボRSは、軽としては久々に力の入った本格的なスポーツモデルとなった。改良型の直列3気筒DOHCターボエンジンは最高出力こそ64PS/6000rpmとメーカー自主規制枠いっぱいだが、最大トルクは10.0kgm/3000rpmとノーマルエンジン(49PS/6500rpm、5.9kgm/4000rpm)から大幅に向上。スズキによると、「ターボラグを約20%抑え、ターボ過給レスポンスを向上させ、力強く胸のすく加速を実現した」という。現行アルトの特徴である軽量化はターボでも変わらず、FFモデルは車両重量が670キロと軽い。
足回りはKYB製の専用ショックアブソーバーを採用。タイヤはブリヂストンの「POTENZA RE050A」で、15インチの専用タイヤを新開発したという。ボディに関しては軽量化を図りながらも「フロントバンパーメンバーの装着などで車体のねじり剛性をノーマル比約5%向上。車体後部にスポット溶接を効果的に増し打ちし、操縦安定性と応答性を向上させた」という念の入れようだ。
ホンダ「S660」はミッドシップスポーツ
かつて軽自動車には各メーカーともスポーツモデルが存在した。1987年登場のアルトワークスはその火付け役だ。2輪メーカーでもあるスズキは伝統的にスポーツモデルが得意で、ダイハツやホンダなどライバルメーカーもアルトワークスに追随し、自主規制枠(64PS)いっぱいのスポーツモデルを投入した。
アルトワークスは小型車顔負けの走行性能で、全日本ラリー選手権などモータースポーツでも活躍。ファンの支持を集めたが、2000年に生産を中止。今回のアルト ターボは「ワークス」のサブネームこそないものの、かつて存在した「RS」のグレード名を冠し、ホットモデルであることを強調している。
一方、ホンダは同じくバブル期に登場し、一世を風靡した2シーターのスポーツカー「ビート」の実質的な後継モデルとなる「S660」を今春リリース。既に2015年1月の「東京オートサロン」でコンセプトモデルを公表するなど、市販は秒読み段階だった。かつてのビートと同様、3気筒DOHCエンジンをシート後方にマウントするミッドシップスポーツで、そのネーミングから、往年の名車「ホンダS600」の再来と見ることもできる。
バブル期の1980年代後半から1990年代初頭に生まれ、一時代を築いた軽スポーツカーが、アベノミクスで15年ぶりの株高に沸く2015年春に復活することは、偶然なのか、それとも景気循環のなせる業なのか。真偽はともかく、スズキ、ホンダから登場する軽スポーツに対するユーザーの反応に注目したい。