スマートフォン(スマホ)で立ち遅れている米マイクロソフト(MS)が、ライバルから強引にユーザーを引き抜くような方法を編み出した。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した端末に、MSの次期OS「ウィンドウズ10」を「上書き」してしまうというのだ。
ひとつの実験というが、将来はアンドロイドからシェアを奪い取るような動きにつながるだろうか。
存在感の薄い「ウィンドウズフォン」にこだわらず
MSは2015年3月17日、ウィンドウズ10を今夏に190か国で発売すると発表した。この中で、中国のスマホメーカー「小米(シャオミ)」との協力にも触れている。同社の旗艦スマホ「Mi4」の利用者向けにウィンドウズ10を無償提供し、端末にインストールして使用感をテストしてもらおうとの試みだ。
詳しい情報が、3月24日付の日本経済新聞電子版の記事にある。中国で開かれた端末メーカーの技術者向け会議に、MSのテリー・マイヤーソン上級副社長が出席。MSが「Mi4」に「ウィンドウズ10の試用版をインストールするためのソフトを開発」したという。もともと「Mi4」のOSはアンドロイドだ。つまりウィンドウズ10を後から入れて、先に入っていたアンドロイドを「消す」。日経の記事は「いわばハードの『乗っ取り』だ」と表現した。
スマホのOSは、アンドロイドの独壇場だ。米調査会社IDCが2014年12月1日に発表したデータによると、2014年のOS別シェアは、スマホ端末の出荷台数ベースでアンドロイドが82.3%と圧倒する。2位は米アップルの「iOS」で13.8%だ。一方、MSの「ウィンドウズフォン」のシェアは2.7%にとどまる。日本国内でも存在感は薄い。ウィンドウズフォンのウェブサイトに「現時点で入手可能な電話はありません」と記されているほどだ。
MSが主戦場としてきたパソコン(PC)市場は、今後大きな成長は期待できそうにない。ウィンドウズを中心としたソフトの販売拡大のためには、スマホ市場から退場するわけにはいかない。そこで、どうやらウィンドウズフォンにこだわらない方針に転換しているようだ。そのひとつとして、主力のビジネスソフト「オフィス」をアンドロイドやiOS向けに提供。3月23日には、韓国サムスン電子との提携を発表し、「ギャラクシー(Galaxy)」ブランドのスマホやタブレット端末に「オフィス」を標準搭載することが決まった。
MSは、iOSとアンドロイドいずれかを搭載したスマホ、タブレット型端末に「オフィス」の主要機能を無料で使えるようにしている。モバイル端末での利用者拡大に躍起なのだ。