経常黒字が続いた時、ドイツは金、日本は米国債を買った
新興国を中心とした世界の中央銀行が金の保有量を増やす傾向にあるのは、米ドル資産の分散化が狙いだ。金・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、「新興国は外貨準備で米ドル資産を積んできましたが、その兼ね合いで金も保有するようになりました。つまり、米ドルのリスクヘッジですね」と説明する。金は長期的には米ドルと負の相関をもつので分散効果が高いという。
一般に、金は通貨を保有する代わりとされ、外貨準備に積み立てられる金は為替介入や対外債務返済のための資金になっている。
新興国は稼いだ外貨の運用先を、本来なら基軸通貨の米ドルにして米国債で保有するが、日米欧とも量的緩和で通貨は溢れている状況のため、長期的にはドルやユーロ、日本円も弱くなる傾向にある。それもあって、通貨の代替として金を外貨準備に充てようとしているわけだ。
亀井氏は「戦後多くの経常黒字を抱えたとき、ドイツは金に、日本は米国債を買いました。いわば、その差が出ているわけです。いま日本は、米国債の保有規模が大きくなりすぎて、売りたくても売れないほどです」と話す。
とはいえ、金を外貨準備に充てている国は多く、米国やドイツ、イタリア、フランスのほかにもオランダ(外貨準備に占める割合が55%)やポルトガル(75%)なども高い割合で保有している。日本の2%は、あまりに少なすぎるのではないか――。
日本銀行は、「外貨準備には各国の歴史的な経緯があります。また、運用については外貨準備管理の一環なので、方針は開示できません」と話している。