京都大初のプロ野球選手ということで注目されるロッテの田中英祐投手の開幕一軍は夢と消えた。
二軍で一からスタートを厳命され、プロの厳しさにさらされている。
「納得できた」と胸張ったが監督は「結果優先だ」
「学ぶところがまだある。まだ使えない」
伊東監督の田中の評価は厳しかった。2015年3月18日のソフトバンク戦で、1回に1点取られた後、李に2点本塁打されて3点を失う内容を不合格とした。
田中は11日に初めて投げ、2点を取られた。この日は、いわば追試みたいなものだった。そのチャンスをいかすことができなかった。
「この時期(開幕直前)だから、結果優先だ」
伊東監督は、二軍で勉強してこい、と命じたのである。ところが、田中は2回以後、無失点に抑えた投球に胸を張った。
「速球はどの球も良かった。納得できた」
この発言に、プロの厳しさが分かっていない新人の甘さがうかがえる。本番でいきなり3点も先行されたらチームは大きなハンデを背負うことになる。実績のない新人なら本塁打を浴びたところで交代だろう。
田中は147キロの速球に手応えを感じたようである。しかし、どんな速い球を投げようとも、打たれ、点を与えては、どうしようもない。
コントロールと決め球修得、スタミナが課題
田中はドラフト2位での入団である。昨年のドラフト会議前は、地元関西の球団が指名するのでは、との予想があった。現実は阪神もオリックスも関心を持たなかった。「即戦力」の確信が持てなかったからである。
メディアによる前評判は高かった。身長180センチから149キロの速球を投げ、京都大最多のリーグ戦通算8勝を挙げた。指名後は、ノーベル賞を何人も輩出した難関大学から初のプロ野球選手、という材料が話題に拍車をかけた。
聞くところによると、大学時代の練習は1日2時間ほどだったという。これでは体力的にプロですぐ適応できないのでは、との指摘はあった。体力的スタミナ、投手に必要な肩のスタミナも不足している、と見ていたから、二軍で1年かけてプロの投手になる練習をすることは正しいと思う。
「伸びシロはある」と伊東監督は認めているからホープであることは間違いない。球団としては「京都大の投手」として観客動員につなげたいところだろうが、とりあえずひと夏越えるまで辛抱した方が本人、チームのためである。
これまで東京大出身の選手は数人いた。第1号は大洋入りした新治。続いて中日に井手が入団した。さらにロッテに小林。いずれも目立った成績は残していない。学生時の練習量の不足が最後まで解消できなかった。
田中に求められるのはコントロールと決め球の修得。そして5イニングを投げるスタミナをつけることである。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)