サッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ新監督が2015年3月14日、Jリーグの視察に初めて訪れ、「もっとやる気や力強さを見せてほしい」とさっそく注文をつけた。
過去のチームでは規律を重んじ、スター選手でも特別扱いはしなかった。「鬼」「独裁者」とすら評するメディアもあるほどだ。日本代表の絶対的存在である本田圭佑選手や香川真司選手といえども、そのポジションは約束されていないとサッカージャーナリストは見る。
中心選手外すことをためらわない
就任後、初視察に訪れたFC東京‐横浜マリノス戦には代表入りが期待される武藤嘉紀選手や森重真人選手、齋藤学選手らがスタメンで出場。しかしハリルホジッチ監督は時折あくびをしたり、怒って立ち上がったりし、試合後は記者らに「何人かは面白い選手がいた。しかしもっとやる気や力強さを見せてほしい」と語るなど、不満を隠さなかった。
ハリルホジッチ監督はどんな選手でも特別視せず、チームの規律を重んじるスタイルで知られる。ワールドカップ(W杯)ブラジル大会でアルジェリア代表を初のベスト16に導いたが、その裏では前回大会の中心選手を外したり、隠れて水たばこを吸った選手をチームから追放したりするなど、強権を振るってチームを引き締めた。
3月13日の就任会見では「スターとは、チームがスターだと思っている。スター選手もチームのために仕事をしてもらう」と明言。名前は出していないが、「何人かは自信を失っているようだ。2、3年前はもっといい選手だった」と複数の選手が不調に苦しんでいることを早くも見抜いている。
また、3月13日付のスポーツニッポンの単独取材では、本田選手や香川選手もポジションが安泰ではないのかと記者に聞かれ、「ほかの選手全員と同様、組織的なプロジェクトに全身全霊で入らねばならないのは確かだ」「どんな選手であってもベンチに置くのを恐れたことは一度もない」と答えている。
「試合で動けない選手なら使わない」
3月末には初陣となる親善試合が2試合組まれているが、所属チームで目立った活躍ができていない本田選手や香川選手、けがに苦しむ長友佑都選手は新監督にどう扱われるのだろうか。
「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は「彼らの立場は安泰とは言えない」と語る。
会見などでの監督のコメントについて、
「過去、日本代表が結果を残した02年と06年W杯ではチーム内に激しい競争があった。これらを踏まえて、チームに刺激を与えようと意図したものかもしれません」
と分析。実際に「試合で動けない選手なら使わない」という選択も考えられるという。
どの監督も就任時には、メンバーは決まっていない、などと話すものだが、ザッケローニ氏は早くからメンバーを固定化し、アギーレ氏は結果を残すよう求められ前回W杯メンバー中心の選考が目立った。結果的に「ザックジャパン」はW杯で惨敗し、アギーレ前監督の下で戦ったアジア杯でもベスト8で敗れる屈辱を味わった。
一方、ハリルホジッチ監督が就任会見で「時間が必要で、皆さんの我慢も必要」と断っていることを石井氏は「じっくり自分のチーム作りをするため、メディアにうまく釘を刺した形でしょう」とみている。