PBから債務残高の対GDP比率も重視する方向へ
一方、歳出抑制には与党から反発が出るのは必至だ。小泉純一郎内閣時代、社会保障費を年間2200億削減するという枠をはめて国民の反発を買い、これが政権交代の一因になったとも言われる、いわくつきのテーマだ。今回、自民党は財政再建に関する特命委員会(委員長・稲田朋美政調会長)の議論を始め、4月末をめどに中間報告をまとめる方針だが、早くも内閣府の試算に対し「成長率の見通しが甘すぎる」といった声が相次いでいる。財務省などは「成長によって税収がどのくらい増えるかを示す税収弾性値や成長率など前提の数字を変えることで、税収見通しを底上げし、歳出カットを抑え込もうという狙いでは」(同省筋)と警戒する。
さらにここにきて、財政健全化目標をPB1本から、他の指標を加えようという動きが出ている。具体的には債務残高の対GDP比率も重視しようという議論で、14年末に自民党の国土強靱化を唱えるグループが安倍首相に持ちかけ、首相自身、12月22日の諮問会議で「GDPを大きくすることで債務の比率を小さくすることになる。もう少し複合的にみていくことも必要かな、と思う」と、理解を示したという。歳出カットより、成長によるGDP拡大に軸足をおく主張といえるだろう。
ただ、債務残高比率重視は、長期金利が名目経済成長率を下回る歴史的な低金利を前提にした面があり、国債の利払い費が極端に少なく見積もることによって、PBが赤字でも債務残高のGDP比は縮小するという「マジック」まがいの議論ともいえる。