「財政健全化目標は堅持する」 安倍首相は強調するが、その陰で...

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   政府の中長期の経済財政に関する試算がまとまり、2015年夏までに策定する財政健全化計画の本格的な議論が始まる。これについて政府・与党内で、目標を複数にする案も浮上するなど議論の行方が見えにくくなっている。

   政府が公式に掲げる2020年度に「基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)」を黒字にするという従来からの目標だけでなく、債務残高の国内総生産(GDP)比というような別の指標も併用しようという考え方だ。ただ、これには歳出削減を弱めたいとの思惑も見え隠れし、財政再建が遠のくとの懸念も出ている。

2020年度の目標達成の道のりは極めて険しい

財政健全化の道のりは険しい・・・(14年11月撮影)
財政健全化の道のりは険しい・・・(14年11月撮影)

   安倍晋三首相は2月12日の経済財政諮問会議で、「財政健全化目標は堅持する。計画策定に向け、検討を進めてほしい」と関係閣僚に指示した。2015年10月に予定していた消費税率の10%への引き上げを2017年4月に先延ばしたことで財政への信認が揺るがないよう、健全化の旗を降ろさない姿勢を改めて示したものだ。

   政府は健全化の指標として、国と地方自治体が社会保障費などの政策経費を、新たに借金せず、税金などでどれだけ賄えるかを示すPBを使ってきた。具体的には対GDPのPBの赤字比率を、2015年度は2010年度の6.6%から半減、2020年度に黒字化するという目標を掲げてきた。2015年度予算のPB赤字が16.4兆円で、GDP比半減の3.3%という目標をクリアする見通しだが、2020年度の目標達成の道のりは極めて険しい。

   内閣府が2月12日の諮問会議で示した試算によると、経済成長率が実質で2%以上の「経済再生ケース」で2020年度のPB赤字は9.4兆円、実質成長率が1%弱にとどまった場合の赤字は16.4兆円に上る。

   これに関し、この経済財政諮問会議では、高橋進日本総合研究所理事長ら民間議員が、PB赤字の対GDP比率を2016~20年度に毎年0.5%(単純計算で年2.5兆円程度)ずつ改善するべきだと提言した。これは、放っておけば毎年1兆円以上、5年間で6兆円増える社会保障費の削減が念頭にあり、経済成長で分母(GDP)を増やしつつ歳出を抑えて分子も小さくすることを組み合わせるという考えで、「それ(10%)以上消費税率を上げないという覚悟で、歳出改革に取り組まなくてはいけない」(高橋氏)と、歳出削減策に「聖域なく徹底的に見直す」と、踏み込む構えだ。

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