日本政府が「影響が大きい」と懸念していた鳩山由紀夫元首相のクリミア半島訪問は、大方の予想どおり、ロシア側がクリミアの一方的な併合を正当化する材料にされる結果に終わったようだ。ロシアメディアによると、鳩山氏は現地でクリミア併合を支持する発言を連発。日本は対ロ制裁を解除すべきだとした上で、ロシアに批判的な国際社会や日本メディアの論調を「洗脳されている」「恥ずかしい」などと主張した。
日本側は、「あんまりコメントしないほうがいいと思いますね」(民主党・岡田克也代表)「呆れ果ててコメントさえしたくない」(菅義偉官房長官)と、完全にさじを投げている状態だ。
クリミア併合は「世界史上で最も画期的な出来事のひとつ」
ロシアが発給したビザを使って鳩山氏がクリミア入りした場合、日本がロシアによるクリミア併合を容認したかのようなメッセージを送る可能性がある。なにしろ「元首相」なのだ。そのため、日本政府は「影響がきわめて大きい」として訪問の取りやめを求めていたが、鳩山氏は2015年3月10~12日の日程で強行した。
現地で、鳩山氏は日本政府の立場とは全く相いれない発言を繰り返した。3月11日には、鳩山氏は「民主的に行われた住民投票で領土問題を解決した」ことが「世界史上で最も画期的な出来事のひとつ」になるだろうだとして、ロシアによる併合を「称賛」。ウクライナ統治下ではクリミアの産業が発展しなかったとして、日本は対ロ制裁を解除して技術支援をすべきだと主張した、と報じられている。
「対ロ制裁がなければ、産業や先進技術の移転で協力できる。クリミアの産業は、ウクライナ統治下では発展しなかったと聞いたことがあるが、将来性は残っている。クリミアでは日本の経験と知識が求められていると思う」
また、住民生活については
「クリミア住民は幸福で平和な生活を送っていることが分かった」
という感想を持ったといい、クリミア情勢を伝える日本メディアを非難した。
「我々のメディアがクリミア情勢を一方的に報じていることが恥ずかしい。真実を伝える勇気を持たなければならない」
鳩山氏の「併合支持」発言、国営タス通信が細かく伝える
3月12日は、さらに発言をエスカレートさせた。
「洗脳後に社会への視点を変えさせるのは難しいだろう。だが、常識と正義がそれに勝るだろう」
と述べ、ロシア側の立場を改めて支持。
鳩山氏にパスポートを返納させるべきだという声が日本国内で出ていることを念頭に、ロシア側のベラベンツェフ・クリミア連邦管区大統領全権代表は
「あなたに困難があれば、我々はあなたを歓迎する。友人に会えるのはいつでもうれしいことだ」
などと鳩山氏に呼びかけた。これに反応する形で、鳩山氏は
「そういった危険性が出てくれば、ベラベンツェフ氏の提案を受け入れる可能性を排除できない。(提案を)感謝している」
と発言。これが「移住の可能性」と受け止められた。
日本で「美人すぎる検事総長」として有名なナタリア・ポクロンスカヤ氏とも会談。鳩山氏は
「あなたの活動については色々聞いている。私を含めて、代表団の何人かがポクロンスカヤ氏と会いたがっていた。会えてうれしい」
などと喜んでいたという。
これらの鳩山氏の動静は、すべてロシア国営のタス通信が伝えたものだ。タス通信では、日本政府がクリミア訪問に反対していたことも伝えてはいる。
菅官房長官は、こう吐き捨てた
こういった状況に、日本側では「打つ手なし」といった状況だ。「古巣」民主党の岡田克也代表は3月13日午後の会見で、
「まあ、あんまりコメントしないほうがいいと思いますね」
「一私人とは言え、元総理ですから、あってはならないことだと思います。それを言うことが、果たしていい結果につながるかどうか...」
と述べた。鳩山氏を話題にすることで同氏を勢いづかせる可能性があるため、できる限り「黙殺」しておくのが次善の策だと考えているようだ。
菅義偉官房長官も、3月13日午前の会見で
「宇宙人とか色々言われてますけれども...、何を考えて行っているのかなぁ、というふうに思います」
と嘆息。ロシアによるクリミアの併合を
「これは我が国は絶対認められないし、それは米国だけなく欧州周辺国、世界がこうした力による現状の変更は絶対に認めないというのが、当然のこと」
などと改めて非難し、こう吐き捨てた。
「そういう中で、我が国の総理大臣まで務められた方がですね、このような行動を取ることはあまりにも軽率すぎる。呆れ果ててコメントさえしたくない」