スマートフォン向けのニュースアプリ「スマートニュース」が2015年3月11日、川崎市で起こった男子中学生の殺害事件にかかわった3人の少年の顔写真と実名が入った記事を表示し、それをあわてて削除することになった。
「スマートニュース」は提携メディアの記事や写真の表示のほか、自動的に収集した話題の記事を表示しているが、問題になった記事は提携をしていない、まとめサイトのものを拾ってしまったらしい。
インターネットから自動的に収集したものだった
「スマートニュース」は15年3月11日、12日にホームページ上で、
「川崎市男子生徒殺害事件の被疑者である少年の実名および顔写真とされる内容を含むものがありました」
と説明し、同社の運用基準に抵触すると判断したため表示を停止したと発表した。同アプリの記事は提携会社から提供されたものの他に、コンピュータが記事をインターネットから自動的に収集・選定・表示していて、その過程で紛れ込んでしまったものだという。これまでも読者の指摘で表示を停止したものもあり、今回の反省を踏まえ、
「こうした事象に適切に対処するための人的およびシステムによる監視体制の強化と精度の向上に取り組んでまいります」
と説明した。
同社の話によれば紛れ込んでしまった記事は、犯人の名前と顔写真が入っていると思われる記事をアップしたオンラインメディアがあって、その記事をコピペしたブログなのだという。同社はその2媒体の名前は明かせない、としているが、ネット上にはキャッシュが残っている。記事元はあるニュースサイトで、アプリが表示していたのはネットの一部で人気の高いまとめサイトだったことがわかる。まとめサイトは問題の記事を削除していて、記事元のニュースサイトは掲載を続けている。
まとめサイトでも情報の拡散になり、問題になる
ネットでは「スマートニュース」の収集方法に批判が集まる一方で、ネット上には犯人の顔写真や名前、住所が晒されていて誰でも閲覧できるようになっているわけだから、ネット媒体でそれを収集しまとめても、問題はないのでは、という意見も散見される。
少年法61条は「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と定めている。
インターネット問題に詳しい小沢一仁弁護士は、
「61条はインターネットにおける情報発信(まとめサイト等)に際しても問題になると思われます。仮に少年の顔写真等がネット上に出ていたとしても、まとめサイト等がそれを引用することで、情報を拡散させることにつながるからです」
と説明する。
「スマートニュース」に関しても情報の拡散を食い止めるため速やかに問題の記事を削除するのは当然のことであり、同社のように情報を自動取得し、表示するシステムを採用している場合などは事前に対策を十分に行っていることが必要だとしている。