もう「1億円」は夢なのか?
米ウォール街の金融マンはもともと高収入で知られるが、それは例えばトレーディング(売買)やブローキング(取り次ぎ)といったマーケット取引や、M&A(企業買収)業務などの「高い収益」を上げる取引や業務によって支えられてきた。
昼夜を問わず働いて高収益を叩き出していた、若きトレーダーらが「1億円を超える成功報酬(ボーナス)を得た」といった話も、かつてはめずらしくなかった。
ところが、「それも難しくなりました」と、前出の小田切尚登氏はいう。原因は、やはりリーマン・ショックにあるようだ。
リーマン・ショックによって、「お膝元」の米国では多くの金融機関が経営破たんし、生き残った金融機関にも公的資金が入った。それによって金融機関への批判が高まり、ハイリスク・ハイリターンで大きな利益をあげる取引への監視の目が猛烈に強まった。
小田切氏は「レバレッジを効かせて、一攫千金を狙うような取引などを金融当局が厳しく監視するようになったことで、儲かる商売から手を引かざるを得なくなりました。簡単にいえば、証券業務中心から銀行業務へと仕事が移ったことで、以前のように大きな収益を上げられなくなったわけです」と説明する。
それによって若いトレーダーなどは以前のように仕事ができず、ポジションを失い、収入も減る。金融機関は業績悪化のため、いまだにレイオフ(一時解雇)も持さない。
リーマン・ショックの痛手から、まだまだ立ち直ってはいないようだ。