発行部数が「右肩下がり」を続ける新聞業界の中でも、社によって様相は大きく異なる。半期ベースでみれば、大手5社のうち3社が「ほぼ横ばい」で、朝日、読売の2社が前年同期比で6%程度も部数を落としている。
朝日は原発に関する「吉田調書」、いわゆる従軍慰安婦に関連する「吉田証言」の2つの誤報が一部で不買運動に発展し、部数を大きく減らすのは確実だとみられていた。一方、読売は朝日の劣勢に乗じる形で販売攻勢をかけていたはずだが、ほとんど奏功しなかったようで、朝日より大幅なマイナスとなった。
読売、半期ベースでは10年下期最後に1000万部割れ続く
日本ABC協会がまとめた2014年下期(7~12月)の平均販売部数によると、産経新聞が161万5209部(前年同期比0.1%減)、日本経済新聞が275万534部(同0.9%減)、毎日新聞が329万8779部(同1.5%減)と「ほぼ横ばい」または「微減」に踏みとどまっている。だが、「2強」と言われた朝日・読売は様子が違う。
朝日が710万1074部(5.9%減)で、読売が926万3986部(6.1%減)と、明らかに減り幅が他の3社よりも大きい。
毎日新聞社の常務取締役などを歴任し、『新聞社-破綻した ビジネスモデル』(新潮社)などの著書がある河内孝さんによると、両社に共通しているのが、販売コストを削減するために専売店を減らしているという点だ。残り3社についてはすでに配達網の整理や縮小が進んでおり、多少なりとも体力の残っていた2社の衰えがこの1年は目立った、ということのようだ。
特に読売は、かつては「1000万部死守」を至上命題にしていたが、半期ベースでは震災直前の10年下期を最後に1000万部割れが続いている。それでも11年上期~13年上期までは990万~980万部台で推移しており、1000万部復活をうかがっていたようだ。この状況を、河内さんは「現場の努力で無理をしてきた」とみる。この「無理」がきかなくなった結果、部数が急減したということのようだ。
朝日は半年で45万部減
このように、14年下期の平均部数を見る限りでは、朝日よりも読売が劣勢にみえる。だが、下期を月ごとにみていくと、様子は一変する。
読売の14年7月の部数は924万8446部で、12月は914万2753部。半年で1.1%減らした計算だ。これに対して朝日は、726万6866部(7月)、725万2277部(8月)、721万4122部(9月)、702万1480部(10月)、704万2644部(11月)、680万9049部(12月)と推移。半年で45万7000部、割合にして6.3%減らしていることになる。
朝日新聞では、14年8月に、いわゆる「慰安婦」問題をめぐる「吉田証言」関連報道が誤報だと認める検証記事を出したものの、謝罪がなかったとして問題化。9月には、原発事故関連の「吉田調書」の誤報を認め、記事の取り消しを発表した。11月には一連の問題の責任を取る形で木村伊量(ただかず)社長(当時)の辞任が発表されたり、第三者機関「報道と人権委員会」(PRC)が吉田調書の誤報に至るまでの経緯を検証した「見解」を発表したりするなどして、朝日新聞への注目が集まっていた。
半年間での急激な部数の落ち込みには、こういった問題が影を落としている可能性もある。