川崎市の中学1年、上村遼太さんが亡くなった事件で目に付くのは、無料通話アプリ「LINE」での少年たちのやり取りだ。
学校や保護者、警察など大人の目が届かない、いわば「密室」ともいえる空間で事態は急速に悪化していった。
少年らはLINEでひんぱんに連絡
「殺されるかもしれない」。上村さんは2015年になってから同級生にLINEでメッセージを送り、暴行を受けていることなど、自身のトラブルについて相談していた。すでに上村さんの顔には殴られてできた大きなあざがあり、友人らの心配に対し、グループを抜けたがっていることも明かしていたという。
今となれば、上村さんが助けを求めていたとも言えるメッセージだが、LINEに書き込まれた内容は結果として周囲の大人に届いていなかった。
これ以前から上村さんや容疑者らは頻繁にLINEでやり取りを行っていた。事件当日一緒にいたのも、上村さんから容疑者の1人に「遊びましょう」と声をかけたことがきっかけだ。また、容疑者の1人は事件発覚の翌日「もう俺のせいだよ」「もう会えないと思うとめっちゃ悲しいよ」などと心情を吐露していたとされる。
LINEには許可されたメンバーだけがグループ内でやり取りができる機能がある。上村さんが18歳少年を含まないグループを別に作って連絡を取っていたことが、少年を怒らせた可能性があると毎日新聞は報じている。
ネットのたまり場は時代ごとに変化している
LINEが舞台になった例としては、13年6月に広島県呉市で起きた女子生徒殺害事件がある。LINEのグループチャットでのトラブルがきっかけで、容疑者の少女は女子生徒を暴行、殺害した。また、LINEで中傷したり仲間外れにしたりするいじめも問題になっている。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、
「中高生がLINEを使うのはもはや当たり前。グループチャットは普段、自分たちが集まるたまり場のような感覚になっている」
と指摘する。
ただ、ネットにこうした空間ができたのは初めてではない。04年に長崎県で起きた小6女児同級生殺害事件を例に挙げ、
「この事件もプロフィールサイトでのトラブルがきっかけで起きています。子どもたちの密室とも言えるネットのたまり場は、初期の2ちゃんねるやチャットアプリ、プロフサイトなど時代ごとに移行している」
と語る。
これまでもネットを舞台とした事件が起きるたびに、使用制限など何らかの規制の必要性が訴えられてきた。今回の事件でも生徒のスマホやLINE使用について各地で見直しやチェック機能の強化の動きがあると報じられている。しかし井上さんは、
「生徒にスマホ使うな、LINE使うなといっても効果は薄いでしょう。権力がネットをチェックすると、検閲やプライバシーの侵害だとして違う問題も出てくる。まずは、いじめや事件につながるようなモラルの問題を生徒が考えるようにしないと解決につながらない」
と効果に懐疑的だ。