07年のインタビューでは「大部分の日本人が過去の戦争について申し訳ないと思っている」
安倍首相はこれまでの国会答弁で、
「安倍内閣として侵略や植民地支配を否定したことは一度もない」
「我が国はかつて、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えてきた、その認識においては安倍内閣としても同じ」
などと近隣諸国への侵略行為を事実上認めているものの、
「歴史認識については、歴史家に任せるべき」
だとしてきた。村山談話をはじめとする歴代の談話については「全体として引き継ぐ」としながらも、05年に小泉純一郎首相(当時)が出した談話でも使われた「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」といった村山談話のキーワードを70年談話で引き継ぐかどうかは明言を避けている。
北岡氏は安全保障の分野では安倍首相の持論と近い考え方を持っていたが、歴史認識では両者の考え方の違いが明らかになったとも言える。ただ、北岡氏は過去のインタビューでも、今回の発言に近い考え方を示している。例えば第1次安倍内閣が総辞職した後の07年12月のAFP通信のインタビューでは、北岡氏は中国側の厳しい対日感情は、
「日本人がまったく過去の戦争に関して謝っていないし反省もしていない、という誤解から生じている」
と分析。大半の日本人が過去の戦争は誤りだと認識しているとした。
「大部分の日本人が過去の戦争について申し訳ないと思っているし、首相も今までに何度も(過去の戦争について)謝っている」
その上で、
「日本人の一部に『南京事変は存在しなかった』と主張する人たちがいること」
が問題だと指摘している。
菅義偉官房長官は3月10日午前の会見で、北岡氏の発言について、
「今般発足した21世紀構想懇談会における議論をしっかり見守っていきたいと思うし、その懇談会の委員の方のひとつひとつの意見について政府としてはコメントすべきではない」
と述べ、政府としては静観する構えだ。
一方、70年談話の内容には村山談話を引き継ぐべきではないという立場をとる産経新聞は、北岡氏の発言を
「安倍首相が有識者会議の議論や報告を70年談話にどの程度反映させるかは未定だが、有識者会議の有力メンバーの発言だけに、今後、影響が広がる可能性がある」
などと警戒感をにじませながら報じている。